*2002年10月14日:“ミクロコスモス”について
*2002年10月15日:「新編 別世界通信」
*2002年10月16日:不良債権問題に想う
*2002年10月17日:界面について
*2002年10月18日:迫り来る大道芸人たち
*2002年10月19日:誰もが君ほど暇なわけではない
*2002年10月20日:本格ミステリコレクション
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*2002年10月14日:“ミクロコスモス”について


 あなたは、「アキラ」ですか「童夢」ですか?(..この設問についてこれない人は、明日の日記まで読み飛ばすこと。)

 世間的には、「アキラ」(「AKIRA」)の方が圧倒的にポピュラーだと思うし、確かに傑作である。しかし私は敢えて、「童夢」の方が「アキラ」よりも優れていると主張したい。

 「アキラ」の弱点のひとつは、後半、話を広げすぎている(というか、超能力者たちの能力を拡張しすぎている)ことである。もちろんそれが、あの「スケール感」を生みだしているのだが、逆に「作品世界の緊密性」は弱まることになった。

 「童夢」の凄さは、結局、「とあるマンモス団地で“悪さ”をした超能力者と、彼をこらしめに来た超能力者」の物語にとどまっていることである。それ以上でもそれ以下でもない。

 私は、こういうタイプのSFを称して「“宇宙の意志”が出てこない」作品、と呼ぶことにしている。この“世界の狭さ”“宇宙の小ささ”故にこそ、逆に、そこに“限定された”宇宙の密度・濃度が高まるのである。

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*2002年10月15日:「新編 別世界通信」


 「新編 別世界通信」(荒俣宏、イースト・プレス)を読む。幻想文学論というか紹介というか。旧版は随分昔に読んだはずだか、内容をかなり忘れていたので、この際再読を、というわけ。

 ..といっても、読めばどんどん(あの文章、この文章を)思い出すものだ。好著であるので広くお薦めしたいが..しかし、新編刊行に際して、せっかく手を入れているのだから、オリジナルが出版されてから以降の25年間の状況の変化を、もう少しフォローしても良かったのでは。(例えば、「ゴーメンガースト」(17年前に邦訳がでている)を、「翻訳される可能性が、ほとんどあり得ない」作品として紹介しているなど。)

 例によって、面白い個所を抜き書きしておこう。

 「おもしろいことに、アンデルセンが手を染めたそのようなフェアリーテールは、どこの国でも毒の部分を抜き取って紹介された。(中略)そして多くの場合、文学をパフォーマンスに変換するとき、もともと込められていたアンデルセンの「フェアリーテール」としての主張−−真理や死や悲しみの呈示が削られた。代わりに、日本に限らずどの国でも組み込まれたのが、道徳と教訓であった」(125 - 126頁)。

 「なぜなら、子どもは老人と同じように、死の世界の最も近い場所にいるとみなされたからだった。(18世紀当時、ゼロ歳から10歳までの子どもの余命が、60歳以上の老人とほとんど同じであった。)」(129頁)。

 「以上のごとき詳細な「創造」が、当時のヨーロッパ人に頭から信じられたことは、当然であろう。ファンタジーもここまで詳細になれば、かぎりなく現実めいた「存在力」を主張しはじめるからだ。サルマナザールの『台湾誌』は、その意味で『指輪物語』の準世界創造に近い」(214頁)−− 曖昧な情報は疑いやすい(客観的・批判的に対処しやすい)が、詳細極まりない情報は、つい鵜呑みにしてしまう、という一般的な原理。これはこんにちでも(仕事でもプライベートでも)日常的な珍しくもない現象である。これを逆手にとることもできよう。

 「子供の視覚は60フィート以上対象物が遠ざかると、見かけ上大きさの変化が止まってしまうという」(227頁)−− 実は私は、本書中、この「情報」に最も感銘を受けた。これ、本当? どういう原理で? これが事実だとすると、ルネサンス期のフランドル(等)の絵画の、あの不思議な遠近法(というか遠近感覚)を説明できるのだ。つまり、遠景の人物が巨大すぎるのだが..あれは、子供(幼児)の眼に映る世界なのだ、ということになる。

 「(「ナイトランド」について)そういった象徴的な状況を描写するにあたって、かれは意図的に<言語>を描写する。簡単にいえば、作者が描こうとする対象を、ことばによって描写するのではなく、はじめから<名前>をつけて呼んでしまい、それ以上の説明を行わない」(276頁)−− これもこんにちでは、手垢にまみれた手法かな。

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*2002年10月16日:不良債権問題に想う


 いまだに半袖のワイシャツで通勤し、半袖のワイシャツで夜の街に出かけ、半袖のワイシャツで深夜に帰宅しているのである。さすがにもはや、寒いのである。

 じゃあ何故、長袖に切り替えないのかって? 愚問だなぁ..あるいはあなたは、この日記の昨日今日からの読者ですか?

 「面倒だから」に決まってるじゃん [;^J^]。長袖をしまいこんでいる訳ではなく、朝、着替える時に、手を15センチだけ余分に動かせば、そこにスタンバイしているのだが、過去数ヶ月間にわたって確立した、半袖ワイシャツ5着によるローテーション体制を崩すのは、心理的にかなりの抵抗があるのである。現状維持できる限り(というか、今日一日をしのげる限り)、変革は先送り、先送り。多少「寒い」ぐらいは、我慢、我慢。

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*2002年10月17日:界面について


 ふと気が付いた。シフトレバーから離した左掌が汚れている..

 シフトレバーを、拭いてみた..色が変わった..さらに気合いを入れて拭いてみた..さらに色が変わった..[;^.^]

 なんと、とある「物質」 −− はっきり「手垢」と書くのも抵抗がありますので、婉曲表現させていただきますが −− とある「物質」が、層をなして貼り付いていたのであった。その下から、想像もしていなかった色のシフトレバーが現れたのであった。

 シフトレバーが汚れている、ということは、ハンドルも汚れているということである。早速、ハンドルの拭き掃除を開始し、ハンドルの色がみるみる変わって行く..(この発想とアクションを、水平展開という。知らなかった人は、憶えておくこと。)

 ..なるほど確かに、手触りが変わった。なんとも爽やかに..[;^J^] 従来は、シフトレバーにせよハンドルにせよ、特に力を入れずとも軽く触るだけで「掌に吸い付いてくる」、その“粘り”というか“一体感”が、快適であったのだが..[;^J^]

 考えてみれば、前回掃除したのがいつかというと..記憶に無いな..[;^J^]..このマーチを5年3ヶ月前に、中古で入手して以来..[;^.^]

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*2002年10月18日:迫り来る大道芸人たち


 11/1から11/4まで、静岡で大道芸ワールドカップ。年に一度の楽しみである。例年、1日ないし2日だけ出かけているのだが、今年は11/1(金曜日)も代休を取って、4日間とも通い詰めてやろうかしらん?(全日、晴天ならば、だが。)

 ..と考えていたら、今年は浜松アクトシティで、国際オペラコンクールが開催される年なのであった。すっかり忘れていた [;^J^]。2日から10日までの予定。さて、限りある日程を、どう割り振ったものか..

 とにかく、大道芸ワールドカップのガイドブックを、書店で買う。さすが(準)地元と言うべきか、そこそこの規模の書店なら、どこにでも置かれている。さても楽しみであることよ。

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*2002年10月19日:誰もが君ほど暇なわけではない


 私は、ヤフオクで「非常に良い」以外の評価をもらったことはない。取引相手を評価する場合も、幸いにしてこれまで問題の無い相手ばかりであったので、99%、「非常に良い」と評価してきた。1回だけ、極めて反応の悪い相手に当たったことがあり、その時は(「悪い」と評価することも可能ではあったが)「どちらでも無い」と評価した。

 取引相手も、多くの場合、「良い」「非常に良い」以外の評価履歴が無いのであるが、たまに「悪い」と評価された経歴のある人がいる。で、たまーに、その(「悪い」と評価された)内容を読んでみることがあるのだが..

 「落札後、4日間メールが来ませんでした。最悪です!」..ちょっと待ってよ..「出張」「旅行」「サーバートラブル」「PC故障」「家族の病気」..4日ぐらいメールを出せない理由など、100通り以上も考えられるでしょ。こんな相手と取り引きを開始してしまった人こそ、災難だよなぁ..

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*2002年10月20日:本格ミステリコレクション


 日下三蔵が編集している「本格ミステリコレクション」(河出文庫)が、「5 島久平名作選」「6 鷲尾三郎名作選」で、第一期完結。(2〜3日かけて)この2冊をまとめて読了した。

 「島久平名作選」からは、「兇器」「犯罪の握手」「悪魔の愛情」「5−1=4」「悪魔の手」「女人三重奏」など。伝法探偵と(ワトスン役に甘んじていない)南刑事のキャラクターが良い。

 「鷲尾三郎名作選」からは、「文殊の罠」が、超特選! かつて数多の傑作が誕生した、毎度おなじみの“****パターン”なのだが、なにしろ被害者を**の**に**して**を**させるというのだから、スケールが大きいではありませんか。(私はネタバラシを人一倍(人百倍)憎む性格であり、他人にも自分にもそれを許さないために、時に意味不明な文章を書くことがあります。[;^J^])

 その他、「鬼胎」「生きている屍」「疑問の指輪」「風魔」「播かぬ種は生えぬ」「月蝕に消ゆ」「姦魔」「白魔」など、名作・傑作が山盛り。

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*解説


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Oct 24 2002 
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