*2001年05月07日:悪貨とは言わないが
*2001年05月08日:続・狂犬論
*2001年05月09日:「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」
*2001年05月10日:虚を突く
*2001年05月11日:メルヘンの時代
*2001年05月12日:Nさん資料、第7便
*2001年05月13日:恐怖の学園
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*2001年05月07日:悪貨とは言わないが


 全く面識が無い人からメールを受け取る機会が、しばしばある。中には、PCやMacをつい最近買ったばかりなのだろう、と想像できる、初々しい、どこか昂揚しているメールもあるのだが、そういう“メール初心者(あるいはインターネット初心者)”のうちのかなりの多数に共通する特徴が、ひとつある。

 それは、Outlookユーザーであり、かつ、HTMLメール、ということである。それも、フォーマットやフォントに凝ったり、絵を挿入したりする必要があるから、HTMLメールにしているのではなく、ただのプレーンテキストなのに、無意味にHTMLメールにしているのである。

 いうまでもない。Outlookのデフォルトが、こうなっているからだ。(最新版でもこうなのかどうかは、知らないが。)まぁ、無意味なHTMLメールが悪い、とは言わないし、Outlookを使うのは感心しない、とも言わない。ただ、こういう人は..セキュリティパッチを当てるどころか、そもそも「セキュリティパッチ」という概念すら、知らないのであろうなぁ..

 ..と、私が嘆いていたのは、数ヶ月前までのこと。既に達観してしまったもんね。

 PC買ったら、只でメール出来るのが当たり前。(だって、iモードより高いんだぜ。)これが、普通の人の普通の感覚だろう。なぜ、わざわざ(同じことしか出来ないのに)何千円も出して「シェアウェア」を買わなきゃならないの? 大体、「シェアウェア」って、なにさ? そこまで薦めるのなら買ってもいいけど..どこで売ってるの? インストール? なにそれ?

 ..この障壁を突破して、(例えば)Becky!を使わせるのは、並大抵のことでは無いよ。

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*2001年05月08日:続・狂犬論


 ヤフオクで、とある書籍を購入した。十分、品質の良い物件であったし、取り引きもサクサク進んだし、100点満点の相手だったので、「非常に良い」という評価を、入力した。

 ご存知無い方のために説明しておくと、ヤフー・オークションでは、売り手(あるいは買い手)の信頼度を客観的に判断する物差しとして、「評価」を運用している。取り引きが済んだら、自分の取り引き相手である売り手(あるいは買い手)の「評価」を、コメントと共に入力するというもので、これは「非常に良い」から「非常に悪い」までの5段階で、評価に応じてプラスからマイナスまでの「点数」がつく。次にこの人と取り引きする人は、あらかじめ、この点数の累計を確認することによって、(一面識もない)取り引き相手の「信頼度」を、ある程度客観的に推し量れる、という仕組みである。(「累計点」ばかりではなく、これまでに寄せられた「コメント」も、読むことが出来る。)ヤフオクに限らず、このシステムを採用しているサイトは少なくない。

 さて、その「100点満点の取り引き相手」(以下、A氏と呼ぶ)に、「非常に良い」という評価を入力するついでに、A氏に対するこれまでの「評価の履歴」と「コメント」を、眺めてみた。「非常に良い」が、ズラッと並んでいるのだが..

 ..ひとりだけ、「非常に悪い」をつけていた。(この評価者を、以下、B氏と呼ぼう。)

 そして、B氏の「コメント」は、「システムによって停止」させられており、読むことが出来ないのだ。これは、なんらかの個人情報が書かれていたり、あるいは誹謗中傷記事であるなどの、「公序良俗に反する」内容だからである。

 A氏に対して、公序良俗に反するほどのコメント、というのは、明らかに異常である。そこで、“B氏に対する評価”を、読んでみた。(ワンクリックで手繰っていけるところが、便利である。)..なんとまぁ。

 B氏に対する評価は、全て、「非常に悪い」である。そして彼に対するコメントがまた..「いい加減にしろ!」「馬鹿にするな!」「お暇なんですね。がんばってください」「事務局に通報しておきました」..という類ばかり。ごく少数、「非常に悪い」と評価しただけで、特にコメントをつけていない人もいるが、ほぼ全員が、憤懣やるかたない、怒りに満ちたコメントをつけているのである。

 ヤフオクでは、「コメント」に対する(この場合は、B氏からの)「返答」も読むことができるのだが、これがまた..「甘いね。ケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケ」「そういうお前が馬鹿なんだよ」「事務局のアドレスって教えてくれない? お前こそ、通報しとかなくちゃならんからな」..

 ..事情は判った。

 B氏は、ヤフオク荒らしだったのだ。

 買う気も無いのに、落札する。そして、相手に対して「非常に悪い」という「評価」だけして、ケツまくるのである。相手の「評価」の「履歴」に「傷」をつけることだけが、目的なのである。ヤフオクの「評価」システムは性善説に立脚しており、こういう「評価荒らし」に対しては、無力なのである。

 B氏に(たまたま)“目を付けられ”、“営々と築き上げてきた自分の「評価」(すなわち「信用」)の履歴”に傷を付けられた人こそ災難であり、だからこそ、B氏に対する怒りを、コメントの中で爆発させているのだが..

 ..諦める方が、賢い。相手は、狂犬なのである。狂犬の駆除はプロにまかせるべきであって、シロウトが下手に手を出すと、大怪我をする。噛みつかれても、目を合わせないこと。一切、相手にしないこと。(現に私は、A氏に対する「非常に悪い」という評価は、なんぼなんでもおかしい、と、ワンクリックしただけで、(A氏にはなんの問題もないという)事情を把握する事が出来たのだから。)

 「癩乞(かったい)に棒遣り」とは、まさにこのことである。

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*2001年05月09日:「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」


 車が、修理から帰ってきた。キャブレタ(だったかな)の交換。(中古の)部品代が1万7千円、工賃が1万1千円。

 いくつかのコミック誌に、「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」のアピールが掲載されている。「新古本店」の隆盛によって、本来、漫画家が受け取るべき印税が、大幅に減っており、このままでは、漫画家は「割の合わない職業」として、輝きを失ってしまう。これは文化的な危機である、という訴えである。(主として問題にしているのは「新古本店」であるが、「マンガ喫茶」も射程に入れている。)

 心情的には、全く同感である。私も、BOOK OFFを始めとする「新古本店」は、しばしば利用しているが、例えばそこでの売価が、作家への還元分、値上がりしても、全く異存は無い。新刊コミックの場合、漫画家へのリターンは、5%を遙かに下回っている筈だが、仮にBOOK OFFの売価が5%値上がりしても、売り上げが下がるとは思えない。(「200円」が「210円」になると、レジの効率が下がるのは予想できるが。)つまり、「新古本店」側でも、受け入れられないことではあるまい。そもそも、漫画家の収入が減ることによって、漫画文化が活力を無くしてしまえば、漫画家・流通業界・読者の、全員が不幸になるのである。

 問題は、この「還元システム」の定義域(適用範囲)を決めることの困難さと、システムの事務的な煩雑さにある。「新古本店」とは何か? 普通の(街の、小さな)古書店は、対象外か? 漫画だけか? 著作権者が複数いる場合の処理は?

 しかしここは、頑張りどころだと思うのだ。まんだらけの社長も、この問題は重視しており、「21世紀のコミック作家の著作権を考える会」に参加しているか、少なくとも話し合いを持っているはずである。

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*2001年05月10日:虚を突く


 学生時代の想い出話だが..確か、4年生の夏だったと思うのだが、ゴロゴロゴロゴロと、不穏な雷鳴が響いているなかで、研究室で実験(情報科学科なので、ほとんど全て、コンピュータの端末での作業)が進められていた..

 停電! 悲鳴!

 ..すみやかに電源は回復し、みんなブツブツいいながら、壊れたファイルを復旧するなどしつつ、作業を再開した。そして、およそ30分後..

 再び、停電! 悲鳴!

 ..やはり、すみやかに電源は回復し、みんなブツブツいいながら、作業の再開を..

 その“15秒後”、三度目の停電が!

 ..この日の最大の悲鳴を、この時、全員が叫んだのであった!

 1回目の停電は、これは仕方が無い。こんなゴロゴロゴロゴロのコンディションで作業をしているのだから、みんな覚悟していた。2回目の停電も、同様。こんな日に、1回しか停電がないということは、あり得ない。

 しかし、3回目の停電には、全員が、完全に“虚を突かれた”のである。まさか、電源系統が回復しつつある、この局面で、すぐにまた停電するとは、誰ひとり予想していなかったのだ。なまじ「停電慣れ」している人ほど、「安全な」この時間帯に、いくらかでも作業を進めよう、と、急いでファイル群を開き、ジョブを再開していた..そのため、この日の最大の被害を、この3回目の停電で被ったのだ。

 ..実に鮮やかな、雷神の攻撃であった。

 このタイミングは、“応用”が効く。趣味でも仕事でも。(何を“攻撃”するのかは、ひとさまざまだろうが。[;^J^])

 ちょっと難しいのは、ネット上のディベートへの適用である。そもそも、厳密な“タイミング”が存在しないのだ。

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*2001年05月11日:メルヘンの時代


 「レコード芸術」誌5月号に、ちょっと面白い記事があった。第200頁の「躍動感あふれるメルヘン世界」(沼野雄司)という記事の、「“抜け道”としてのメルヘン・オペラ」と題された最初の節を、全文引用する。


 今さら言うまでもないことだが、現代オペラには独特の難しさがある。

 というのも、オペラというジャンルを特徴づけている、声や演技や舞台美術といった要素はことごとく、その規模に見合ったカタルシスを要求するからだ。ピアノ曲や管弦楽曲であれば“オチなし”であっても許されるのだが、超絶的なアリアや巨額の費用を投じた舞台セットは、悲劇であれ喜劇であれ、ドラマのクライマックスできちんと蕩尽されて観客をスカッとさせる必要がある。

 しかしながら、無調の現代オペラの場合、常に響きに緊張感が張りつめているために、音楽的なカタルシスを作るのが難しい。さらに、台本自体も難解、演出も象徴的だから、結局ものすごい時間とお金と労力をかけた末に、全然スカッとしないものが出来上がることになる。この障壁を乗りこえて、聴衆を納得させるには、相当に高い技術と、周到な戦略が必要になろう。

 ただし、現代オペラであっても“子ども向き”のメルヘン・オペラとなると、事情は少し異なってくる。

 まず、子どもの世界は空想と現実の境目が稀薄だから、意外にも無調の音楽がよくマッチする(表現主義独特の奇怪なイメージやデフォルメは、まさに子どもの世界だ)。さらにメルヘンであれば、カタルシスもそれほど要求されないし、時間も短くてよい。そしてお気楽なハッピーエンドさえ許される。

 これらは、現代の語法と、オペラというジャンルの調停に悩む作曲家にとっては、実に心強いことに違いない。ともかくメルヘンに題材をとるだけで、現代オペラのマイナス面が、ほとんど帳消しになってしまうのである。繰り返すと、全面的に無調で、特殊な技法を多用して、荒唐無稽なストーリーで、カタルシスもなくて、時間も短くて、ハッピーエンドであっても、きちんとオペラが成立する……。ちなみに、きわめて現代音楽的な技法である“シュプレッヒ・シュティンメ”(倉田注:日常的な語調に近く語るように歌う)が、最初はフンパーディンクの《ヘンゼルとグレーテル》において使用されたことは象徴的だ。


 (確かに、いわれてみれば、テレビの子ども番組など、大人には理解できないほどのシュールさである。)

 ここではもちろん、「現代オペラ」に特化した問題が論じられているのだが、しかしこの視点は、応用が効きそうだ。例えば..さまざまなジャンルにおいて、もはや「重厚長大」な時代では無い、として、(必ずしも「軽薄短小」とはいわずとも)ことなった切り口で製品・商品を作ろうとしているのだが..スベっているケースは、山ほどある。あるいは「子ども」が、「メルヘン」が、世界を(業界を)救うのかも知れない..

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*2001年05月12日:Nさん資料、第7便


 まず、浜松市立中央図書館。


マンガの前線 いまでもハングリー(インタビュー)::1:朝日新聞:77/12/27

 ..という記事の、初出確認。これに引用されている「ブラック・ジャック」の場面から、およその掲載年月は判っていたものの、これまで、紙名が不明だったのだ。先日の国会図書館調査で、偶然、このタイトル(「マンガの前線」)の連載が、朝日新聞に掲載されていることに気が付き、本日、縮刷版で裏を取った、というわけ。

 午後からは、Nさん資料第7便の整理。今回、特徴的なのは、まず、「鉄腕アトムクラブ」に掲載されている記事で、


手塚先生に5つの質問(インタビュー)::2:鉄腕アトムクラブ:66/04
手塚先生から見た児童まんが家(エッセイ)::1:鉄腕アトムクラブ:66/05
手塚先生がファンにのぞむ(エッセイ)::1:鉄腕アトムクラブ:66/05
手塚先生にズバリ質問(インタビュー)::2:鉄腕アトムクラブ:66/05

 ..等など。「鉄腕アトム」や「ぼくのまんが記」以外にも、小エッセイやインタビューの類が、いろいろあったのだ。(もっとも、Nさんは、資料を送ってくださるに際して、ひととおり同誌に目配りしたと考えられるので、これ以上の欠落は、あまりあるまいが。)

 また、各種の「TV番組内イラスト」も、今回の珍しいアイテムである。

 「火の鳥2772」関係は、今回も多かった。これまでに収集したデータから、タイトルに「2772」を含むものをざっと検索しただけで、


* “火の鳥2772”のスタッフのみなさんへ(エッセイ)::1:火の鳥2772ニュース(社内版)第2号:79/11/13
* 手塚治虫自らが語る、「火の鳥2772」誕生までのエピソード(談話)::1:火の鳥2772ニュース(東宝宣伝部、手塚プロダクション)創刊1号:79/12/15
* 「火の鳥2772」の新しいシステム(エッセイ)::1:キネマ旬報:79/12/下旬
* 3つのメッセージ(火の鳥2772)(エッセイ)::1:ジ・アニメ:80/02
* 火の鳥2772 原作(作画 御厨さと美)::192:マンガ少年:80/02,80/03,80/04
* 「火の鳥2772」をめぐって−(対談)(御厨さと美氏)::5:「火の鳥2772 −愛のコスモゾーン−」(朝日ソノラマ 月刊マンガ少年別冊):80/04/01
* メッセージ(エッセイ)::1:「火の鳥2772 1」(講談社 アニメコミックス):80/04/25
* 僕は「火の鳥」を描き続ける。(エッセイ)::1:「火の鳥2772」(FANTASTIC COLLECTION 19、朝日ソノラマ):80/04/30
* 「火の鳥2772」で世界にアピールするメッセージを送りたい!(対談)(石上三登志氏)::7:キネマ旬報:80/04/上旬
* 原作者メッセージ(エッセイ)::2:「火の鳥2772 −愛のコスモゾーン−」(下巻)(SF FANTASTIC NOVELS、少年画報社):80/05/01
* 原作者のことば 地球の未来をゴドーの復活に託して……(エッセイ)::1:「火の鳥2772」(秋田書店 映画テレビマガジン):80/05/20
* メインスタッフプロフィール メッセージ(エッセイ)::1:「火の鳥2772 愛のコスモゾーン 設定資料集」(少年キング増刊):80/05/27
* 火の鳥2772とは、未確認飛行物体2772のことだ(対談)(竹下景子氏)(文化放送「竹下景子のこの指とまれ」より)::3:「火の鳥2772 愛のコスモゾーン 設定資料集」(少年キング増刊):80/05/27
* 原作者からのメッセージ(エッセイ)::1:「火の鳥2772 愛のコスモゾーン 設定資料集」(少年キング増刊):80/05/27
* (エッセイ)::1:「火の鳥2772/オリジナル・サウンドトラック/音楽集」日本コロムビア:80/?
* 手塚治虫は語る “火の鳥2772”はファンタジーだ!(談話)::2:「火の鳥2772」プログラム:80/?
* 火の鳥2772について::1:Telepal:83/07/16

 ..こんなに出てきた。この数は、(「鉄腕アトム」を除けば)他のアニメ作品に関する記事(発言)と比べて、完全に突出している。

 この作品に、いかに力を入れていたかが、良く判る。「火の鳥2772」は、少なくとも日本においては非常に評価が低いのだが、海外では、(確かいくつかの賞を獲得していたと記憶するが)かなり評価が高い。手塚治虫も、このことには何度も言及している [;^J^]。日本においては、手塚治虫のファンであっても、「2772」を話題にすることは、それとなく避ける [;^.^]、という雰囲気があるのだが、もう一度、しっかりと向き合うべきではないか。

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*2001年05月13日:恐怖の学園


 近所の女子短大の門と塀に、鉄条網が設置されていた。思わず恐い考えになってしまった [;^.^]。

 ここでいう「恐い考え」とは、「この物騒な世相、休日の女子短大に侵入して、なんぞ悪さをする変質者・犯罪者がいないとも限らない、と、学園当局が考えたのであろうなぁ..」、などという、常識的な連想ではない。

 思わず、「13月の悲劇」(美内すずえ)を想い出してしまったのだ。この考えは、恐い [/_;]。(面倒なので、この名作恐怖漫画についての説明は略す。)(今、気が付いたが、今日は13日であった。ひーん [/_;]。)

 ダグラス・アダムス逝去。享年49歳。若すぎる..

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*解説


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: May 16 2001 
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