*2000年10月02日:どんどん発注する
*2000年10月03日:世界標準とか
*2000年10月04日:澁澤龍彦について
*2000年10月05日:「海洋地形学の物語」を巡って
*2000年10月06日:妙な地震
*2000年10月07日:「週間探偵登場」など
*2000年10月08日:「ファウストからの8つの情景」
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*2000年10月02日:どんどん発注する


 「3軒茶屋の2階のマンガ屋」の新着情報をチェックすると、(正確には、毎週月曜日にこのページを見に行っているのではなく、新着情報をメールで送ってもらえるサービスを利用しているのであるが、)「プレイコミック」誌の、「人間昆虫記」(手塚治虫)がらみでデータ未詳だった期間の号が、さらに3冊出ている。即、発注。しかし..

 小出しにするなよ、面倒だから! [;^o^]

 まぁ、在庫から小出しにするのが商売の常道だということは、知っているんですけどね。[;^J^]

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*2000年10月03日:世界標準とか


 近頃、天狗でしばしば、小耳にはさむ話題。

 それは、「インターネット」と「ISO」。

 もちろん、私の耳が過剰反応しているということは、あるだろう。(“インターネット”については言わずもがな、“ISO”についても、業務上(ISO9000とISO14001に)関係が深いのである。)客層の主体がサラリーマンである、という理由もあろう。

 それにしても、1年前より、明らかに耳につくようになってきた。そういうご時世か。(ご存知無い方へ。ISO9000=“品質に関する国際規格”、ISO14001=“環境に関する国際規格”、と、極めて大雑把に理解しておいて良い。)

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*2000年10月04日:澁澤龍彦について


 澁澤龍彦が“マンガ的”だと指摘すると、反発する人も多々いるでしょうが..ま、少しは私の話も聞いて下さいな。[;^J^]

 昔々、ロック評論家の渋谷陽一は、なんでもかんでも、(音楽だけではなく、さまざまな社会現象や思想に至るまで、)「これはロック(的)ですね!」、と、自分側に引き寄せていた..いや、こういう物言いは、むしろ、当時の“ロッキンF”誌(略称“ロクF”)の編集長(名前失念)の「編集後記」に目立っていただろうか。

 もっと“露骨”だったのは、1960年代から70年代初頭にかけての“日本SF界”で、「あれもSF、これもSF」、と、それこそ「かぐや姫」から「カフカ(だったかな?)」まで、なんでもかんでも「SFの領土の住人」呼ばわりしていたのである。もちろん、(前記の「ロック」も、多分にそういう傾向はあったが、)本気でそう信じている(考えている)のではなく、まだまだ社会的に認知されていないジャンルを背負って立つ(スポークスマン的立場の)人々の、戦略的・戦術的な発言では、あったわけだ。

 ..という歴史的背景を鑑みるに、「あれもマンガ、これもマンガ」、的な発言は、いかにも気恥ずかしい(「マンガ」ジャンルにとって、そんな発言は“必要無い”)のだが、しかしやはり、澁澤龍彦の著作の、マンガ的な面白さとわかりやすさは、誰にも否定出来ないと思うのだ。(これは言うまでもなく、最上の誉め言葉なのである。)無論、ごく初期の(「神聖受胎」などの)著作には、晦渋な文章も散見されるのだが、これはどんな文筆家でも(文筆家でなくても)やらかす、青春の病い(若さ故の過ち)という奴である。

 その「マンガ的な面白さとわかりやすさ」が、彼の選ぶ「題材」故である、という見方は、否定できない。しかしそれよりなにより、文章の魅力が、圧倒的だと思うのだ。とにかく、(文学にせよ美術にせよ)同じテーマについて書いた場合、“他の誰よりも”、澁澤龍彦の文章が、一番平明で、判りやすい。これは大変なことである。

 特に晩年の文章の、自然体としか言い様の無い、伸びやかさと明晰さ! 「高丘親王航海記」を読んでみたまえ。その、何ひとつ企んだところのない文章の晴朗さ! 私はこれを読んで、初めて、「天衣無縫」という言葉の意味が判った。

 ちなみに、澁澤龍彦の名著と言えば、「黒魔術の手帖」「夢の宇宙誌」「胡桃の中の世界」「思考の紋章学」「幻想の画廊から」あたりがすぐに出てくるかと思うが、「その辺りは、あらかた読んじまったぜ」、という人に、是非ともお勧めしたいのが、「旅のモザイク」。このユーモラスな旅行記は、澁澤龍彦の“ダークな”雰囲気に魅入られた人々にこそ、是非とも読んでいただきたいものなのである。

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*2000年10月05日:「海洋地形学の物語」を巡って


 (今夜の話題は、プログレオタク(プログレおやじ)でないと、ついてこれないかも知れないよ..と、あらかじめ、お断りしておいて。)

 随分以前に、新聞で読んだ記憶があるが、とある日本料理屋のおかみさんの談話。「オレンジジュースは、出したくない」。刺身や天麩羅と一緒に飲まれては、たまったもんじゃない。出来ればビールもやめて欲しい、というのである。もっともな話である、と、感心した。食事と酒とは、切っても切れない関係があるはずなのだから..(などと、ほぼ毎晩、天狗で「(一番廉い)白ワイン」をガブ飲みしながら、肉も刺身もピザも焼きそばも食っている男が言っても、説得力は皆無だが [;^J^]。)

 酒と料理の相性がある以上、音楽と料理の相性もあるはずである。天狗では、幸いにもBGMがかからないので、ある意味、ニュートラルに食事(と酒)を楽しめるのだが、これがミスマッチだと、やはりたまったもんじゃなかろう。例えば、焼き鳥。これのBGMはもう絶対に、演歌でなければならない、と思うのだ。少なくとも、イエスの「海洋地形学の物語」であってはならない..(※1)

 ..なんでまた唐突に「海洋地形学の物語」なのかと言うと、近頃、会社への行き帰りの自家用車の中で、(久しくご無沙汰していた)イエスのCDを、ファーストアルバムから順番に、片端から虫干しよろしく、かけていたからである。たまたま、スーパーの駐車場に乗り付けた時にかかっていたのが「海洋地形学の物語」で、ドアを開けた瞬間に鼻を襲ったのが、駐車場に出店していた「焼鳥屋」の香りだったというわけ。

 しかし、こうしてイエスを総ざらいして聴いてみると..やはり、アルバム「こわれもの(Fragile)」と「危機(Close to the Edge)」が傑出している。前者には、いくらか緊張感を削ぐ(完成度の低い)ピースも含まれているが、「危機」の3曲には、そういう弱みというか“隙”が、全く無い。特に、A面(古語)の「危機」は、何度聴いても凄い。これほどの高みには、イエスといえども、二度と到達することは出来なかったのである..

※1「海洋地形学の物語」をBGMにしてしまっては、大概、どんな料理でも不味くなる..という、面白いオチを用意してあったのだが、ここで書くのは、勘弁しといたるわ。[;^J^]
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*2000年10月06日:妙な地震


 昼過ぎに、妙な揺れ方をする地震。

 非常にゆっくりとした、長いスパンで、しかも徐々に大きく揺れ続ける。

 震源地が、遠い..

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*2000年10月07日:「週間探偵登場」など


 例によって早起き。朝刊一面のトップ記事に、さすがに驚いた。昨日の地震の震源地は鳥取で、しかも半端じゃない大きさ。崩壊した建造物の写真が痛々しい。被害の規模(というか広がり)は、まだはっきりしない..

 来週月曜日(祝日)の「お気楽スタバト」オフに備えて、今日から横浜に(シンセ持参で)帰省する。

 例によって6:43のバスで発ち、7:14浜松発のひかりで東京駅着が8:35。銀の鈴待合所のコインロッカーにシンセとリュックを放り込んで必要最小限の手荷物だけにして、国会図書館に着いたのが、9時少し過ぎ。

 手塚治虫漫画全集の第382巻以前に収録されたマンガ作品中、調査からもれていた分を、ほぼ全てサルベージした。(無論、初出誌が収蔵されていなかったり、欠号だったりするものは、除く。)「週間探偵登場」の全集未収録エピソードを発見できたのが、本日最大の収穫。


週間探偵登場:カマトトが崎(前編):5:別冊週刊漫画TIMES:60/10
週間探偵登場:カマトトが崎:6:別冊週刊漫画TIMES:60/11

 ..である。内容的には特に問題は感じられないので、単にページ数の都合だったのであろう。

 全集の第383巻以降に収録されているエッセイ(等)のうち、初出が雑誌ではなく、(他の著者の)単行本に寄せた「あとがき(等)」であるものも、重点的にチェックした。(従来、いちばん後回しになっていたジャンルである。)結果、全集の初出情報のバグを、3点発見。

 明日のスケジュールも、図書館/古書店巡りにアサイン済みなので、大荷物を担いでの移動で疲れ気味の今日、無理することは無い。国会図書館を退出後はどこにも寄らず、東京駅に戻ってシンセをゲットして、横浜の実家に直行する。

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*2000年10月08日:「ファウストからの8つの情景」


 報道によると、今のところ、地震による死者は出ていない模様。かなり大規模な地震だったので、むしろ意外である。よほど運が良かったのか?(少なくとも、大都市直撃では無かったわけだし。)不幸中の幸いである。

 今日は、まず現代マンガ図書館。昨日、国会図書館でチェックしきれなかった(欠号になっていた)箇所を、埋められるだけ埋める。(「少年チャンピオン」誌など。)ここでもカバー出来ないものは、一端、棚上げ。大宅壮一文庫にはマンガ雑誌がほとんど無く、日比谷図書館をはじめとする都内の図書館は、まだ未開拓である。(つまり、実力のほどが判っていない。)

 次に、中野まんだらけ。収穫少々。4Fの(「大予言」では無い方の)古書店でも収穫少々。神保町に移動して、中野書店。売却1冊、収穫は無し。

 秋葉原まで徒歩で移動。石丸でCD、DVD、各1枚。さらに渋谷へ向かい、渋谷まんだらけで収穫少々。

 石丸で購入したCDについて、説明しておく。これは、佐渡裕が指揮した「FAUST」というアルバム(ERATO 8573-80234-2)で、「レーナウの“ファウスト”によるふたつの挿話」(リスト)、「ファウスト序曲」(ヴァーグナー)、「ファウストからの8つの情景」(ベルリオーズ)を収録したもの。リスト作品とヴァーグナー作品は、どうでも良い [^.^]。他にいくらでもCDを持っている。問題は、ベルリオーズの「ファウストからの8つの情景」であり、これは、世界初録音なのである。

 以下、読者が、ベルリオーズの「ファウストの劫罰」の楽曲構成を知っている、という、確率的にあまり想定しがたい前提で話を進めるが、ついて来れない者は、置いて行く [;^J^]。

 「ファウストからの8つの情景」は、「ファウストの劫罰」の17年前、(ついでに言うと「幻想交響曲」の1年前、)ベルリオーズが26歳の時に作曲した、ちょっと異様な構成の「組曲」である。そして..なんと驚くべきことに..

 以前から、(中学生時分から、)この(未聴の)作品の構成は、知っていた。「復活祭の歌」「菩提樹の下の農夫たち」「空気の精の合唱」「鼠の物語」「蚤の物語」「テューレの王」「マルグリットのロマンス」「メフィストフェレスのセレナーデ」。「劫罰」の主要な「歌曲」のタイトルが、ずらっと並んでいる。そして今日、はじめて、これらのピースを聴いたのだが..

 なんと..「ファウストの劫罰」バージョンと、ほとんど同じなのである! 無論、メロディーや和声やオーケストレーションの細かい異同はあるが、本質的には、全く同じ音楽! ベルリオーズは、43歳にして完成した自らの最高傑作の根幹を、26歳時分に、既に作り上げていたのである!

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*解説


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Oct 11 2000 
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