*2000年02月21日:足下の迷宮
*2000年02月22日:なぜ、詳細な「あらすじ」を書くのか
*2000年02月23日:「異常値」はカウントしない
*2000年02月24日:いいも悪いも..
*2000年02月25日:「これで最後にします」
*2000年02月26日:手塚MLオフ
*2000年02月27日:「フランケンシュタイン」
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*2000年02月21日:足下の迷宮


 職場のフリーアクセスの床の下を、半端では無い量のLANケーブルが這い回っている。このフロアのセンターハブから這い出して、床の底へ散って行ったケーブルは、そこかしこで床の上に頭を覗かせると、スレーブのハブに入り込み、そこからまた大量のケーブルを吐き出して、それらは再び地の底へ。そしてそれらはまたどこかで地上に出て..

 PC等に辿り着くまでに、中継ハブを3つも4つもタコ足経由していることは無い、と思うが..断言できない。フリーアクセスの床の下を、LANケーブルがどのように這い回っているのか、このLANケーブルは、どこから来たのか、このハブのこの端子から出ていくケーブルは、どこへゆくのか..もはやほとんど、把握できていないのである..

 それでは、カイロの電話網と変わりないではないか、と、叱られるかも知れない。それはそうだが、私の言い訳も聞いていただきたい。私がこのフロアの(LANや電源などの)ケーブルの設置を、最初から担当していれば、決してこういう事態にはならなかった。私が引き継いだのは、コピーを繰り返したとおぼしき、文字の判読も困難な図面と、その上に書き込まれた、意味不明な記号群、及び、色の使い分け方が謎な、一連のラインマーカーのライン群だったのである。そして、その一枚の図面の中に、時間(歴史)が、たっぷりと沈殿していたのだ。神聖代新生代の第四紀、第三紀から、中生代の白亜紀、ジュラ紀くらいまでは遡れる。

 歴代の担当者が粗雑な仕事をしてきた、と言っているのではない。そうではなくて、引き継ぎが出来ていなかったのである。それが数代、繰り返されたために、何がなんだか、わけがわからなくなってしまったのだ。

 時間をかければ、解きほぐすことは可能である。論理的には。床を剥がすのは現実的ではないが、LANケーブルの導通チェッカ(のようなもの)は、手元にある。しかし..世の中には、「可能なこと」と、「不可能なこと」と、「今さら不可能なこと」があるのである。

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*2000年02月22日:なぜ、詳細な「あらすじ」を書くのか


 「“手塚治虫漫画全集”解説総目録」の「総解説」は、全400巻中、ようやく61巻分、書き終わったところである。(今週の更新では、追加できなかった。)今世紀中の完成は、とっくの昔に諦めているが、せめて、2003年の、アトムの誕生日までには間に合わせたいものだが..

 この「総解説」を読まれた方は、「あらすじ」の分量が非常に多いことに、奇異の念を抱かれているかも知れない。「解説」に「あらすじ」は、必ずしも必要ではないからである。また、今のようにかなり詳細な「あらすじ」を書くのをやめれば、「解説」の執筆速度を2〜3倍にスピードアップできるのも、確実だからである。

 詳細な「あらすじ」を書くのは、あとで検索するなど、資料として使いたいからである。少なくとも私自身は、便利に使えているし、読者のみなさんも、きっとそのように利用できるはずである。(全巻分、書き上げないと、データベースとしては「完成」しないんですけどね、ゼェゼェ..)

 「あらすじ」以外に、全てのエピソードについて、(例え短くても)何かしら一言は感想を述べるなどして、「解説」になるよう心がけてはいるが..結局、あらすじを書いておわり、になることも、ままある。今の時点では、勘弁して下さい [;^J^]。そのうち、きっと、書き足しますから。

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*2000年02月23日:「異常値」はカウントしない


 「36協定」などありまして、あまりに長時間の残業を(継続的に)社員に強いることには、規制がかかっている。結構なことだが、現実に要求されている仕事量との矛盾云々は、ここで書くまでもあるまい。みなさん、よくご存知でしょう。

 その絡みで、部署のメンバーの平均残業時間を計算することも、時々ある。言うまでもなく、その数値が大きい部署は、管理部門から「指導」されるわけだ。

 で、いつも思うんだが..この類の「測定結果」を処理する場合、ひとつだけ飛び抜けて高い数字がある時は、それは“外して”平均を取るように、学校では習ったんだが..統計学の常識だと思うけど。[;^.^]

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*2000年02月24日:いいも悪いも..


 ..リモコン次第。これは日本人の常識である。ならば当然、


いいも悪いもユーザー次第

 ..すみません、メーカーの、いちエンジニアの、ただの本音です。[;^J^]

 N書店に、今回の目録の抽選の、当落確認電話を入れる。2冊中1冊、本命の方が当選。吾妻ひでおの、


宇宙ラッシュ!::2:まんが王:1970/01 付録:
人類抹殺作戦秘指令Z::16:まんが王:1970/01 付録:

が掲載されている、「まんが王」付録「ビッグマガジン」である。「人類抹殺作戦秘指令Z」は、「リュウ」に再録されたものを所有しているが、「宇宙ラッシュ!」は未見。納本は来週半ば。楽しみである。

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*2000年02月25日:「これで最後にします」


 ネットニュースでも掲示板でもMLでも何でもいいが、論争の当事者の一方が、「これで最後にしますが、最後にこれだけ」、と、捨てぜりふを述べたとき..

 ..ここからが長びくのである [^.^]。これを、「倉田わたるの“これで最後にします”の法則」と呼ぶ。

 天狗で飲んでいると、Y君、T君、Kさんがやってきた。彼らとこの店で会うのは、初めて。T君の奥さんと合流して、5人で「赤ちゃん」へ。ここも久しぶりである。帰宅したのが何時頃だったか、記憶に無い。

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*2000年02月26日:手塚MLオフ


 久々に、手塚治虫MLのオフ会である。東京は「青山一丁目」に11時、という、実に中途半端な集合時間。新幹線の丁度いい便が無く、結局、10時頃に現地に着いて、1時間弱喫茶店で時間を潰す。前日から読みかけだった「消えたマンガ雑誌」(メディアファクトリー)読了。読み物として面白いし、資料としても結構使える。お薦め。

 11時に「草月会館」。「文化庁メディア芸術祭企画展 <Jam3(ジャムキューブ)> 『Robot−ism 1950−2000 〜鉄腕アトムからAIBOまで〜』」という、謎な企画の一環であるシンポジウム、「Robot−ismヒーロー ロボットがなぜ“ヒーロー”になりえたのか」である。(先日、ローソンで買ったのは、これのチケットだったというわけ。)パネラーは、里中満智子、安彦良和、石上三登志。

 シンポジウム中に取ったメモから。「要約」ではなく、(いちおう、時系列ではあるが)文脈の欠落した「発言のスナップショット」であることに、注意して読むこと。


・「アンドリュー NDDR114」。アメリカ映画が、ついに、ロボットを主人公(ヒーロー)にした。これまではずっと、三枚目・コメディリリーフ・悪役、などでしかなかった。

・ロボットに感情移入するのは、モノや自然に人格(あるいは神格)を認める、日本人独自の感覚である。(里中満智子の、この(どちらかと言えば“常識的”な)発言に対して、安彦良和は、判断を留保した。)

・「少年」誌で「鉄腕アトム」と「鉄人28号」が並列して連載されていた時の、アトム派と鉄人派の対立。大雑把に言って、女の子はアトム派、男の子は鉄人派。当時は、後者が圧倒的に優勢だった。男の子のプラモ好き、技術志向に通ずるか。

・自意識を持つ生物的ロボットと、純粋に道具としてのロボットが、戦後漫画史の黎明期から、ふたつの対極として存在し、しかもひとつの漫画雑誌の中で覇を争っていたことの、象徴的な意味。

・その対立は鉄人派の勝利で終わり、その後の漫画史・アニメ史は、鉄人の系譜が制した。マジンガーZから(ロボットと言えるなら)エヴァに至るまで。アトムには後継者がいない。アトムは、アトム一代限りで終わった。(安彦良和による重要な指摘。)

・海野十三の「人造人間F氏」(1939)は、アジモフの「ロビー」(1940)より早い。但し、日本のロボット(に限らずSF)漫画・映画は、常に子ども向けとして作られ、あるいは受け取られてきた。アメリカでは、大人向けに作る。それを輸入するときは、子ども向けとされる。(例えば、字幕ではなく吹き替え版になる。)

・手塚治虫は機械音痴・機械嫌いだった。免許も持っていなかったが、自動車のボンネットを開けると、目が回ると言ったというエピソード。

・不老不死を目指すのか、神を目指すのか、ペットを目指すのか、いやいややっぱり玩具であって欲しい..ロボットに対する、さまざまベクトルと、我々がロボットに期待していることの、身勝手さ。

・鉄腕アトムが(少なくとも、当時の男の子たちの多くにとって)疎ましかったのは、ロボットを苛め、差別する人間たちのいやらしさが、自分たちを指しているからだったのでは。今、われわれはまさに、その(ロボットにとっての)「嫌な」人間になりつつある。

・ロボットに対する暴君にだけは、ならないように..

・漫画もアニメも、極端にローテクな文化。CG、3Dモデリング、メカ・ロボットのハイテクな時代の今こそ、ローテクでも(あるいはローテクであればこその)感動がある、ということを、忘れないで欲しい。


 このあと、3時頃まで、企画展を見学。この会館の1Fでは、「Robot−ism PARK」として、さまざまな「ロボット」(のイメージ)、6Fでは、「Robot−ism Museum」として、点在する30台ほどのモニターで、歴代のロボットアニメの映像展示が中心、7Fでは、「文化庁メディア芸術祭受賞作品展」。

 6Fと7Fの展示については、特に述べることは無い。なかなか結構でした。特筆すべきは、1Fの展示の「支離滅裂さ」である。[;^J^]

 アトム、鉄人、エヴァ等の模型から、AIBOやP3のような「実用(非実用)実在」ロボット、「チャブロボ」などのオブジェとしての「芸術的」ロボットから、ただの着ぐるみ、そして明和電機の「魚立琴」まで。最初は呆れたが、(何しろ広くもない会場故、)何度かスキャンしているうちに、この「多様性」こそが“狙い”なのであろう、と、得心した。実際、この会場で展示されビジュアル化された「ロボットイメージ」「ロボット世界」は、驚くほど広い。

 非常に印象的だった「ロボット」を2体。

 まず、ビデオ展示だった「鉄犬」。いや、(全長2メートルほどの、鉄製の)実物も展示されてはいたが、動かなかったのである。ビデオを見ると、こいつは、動力を与えられると、座った姿勢のまま、ジリジリと前進するのである。「目」を爛々と輝かせ、「口」からは火焔を吐きながら [;^.^]。

 ビデオの中では、夕闇の中、この鉄犬が(ターゲットである)木の板に迫りつつ焼き滅ぼしている背後で、空手の胴衣を着た男が、和太鼓を乱打している。凄い迫力である。意味不明だが [;^.^]。(何故か、諸葛亮孔明を想起したことである。)

 もう一体は、これは実用ロボット(予価500万円)として開発された、「テムザックIV」。PHSを利用した、超遠隔操作ロボットである。(北九州・東京間で、タイムラグの無いリアルタイム制御実験に成功している。)その「超遠隔」性を除けば、アームが10自由度だとはいえ、要は人間の手(と腕)の動きを受信して再現するまでのことであるから、(他にも能力はあるのかも知れないが、)技術的飛躍性は感じられなかったのだが..驚いたのは、そのデザインである。(カタログから写真をスキャニングしたくてたまらないのだが、)ロングスカートを着用した女性の姿なのである。ホンダのP3は、まんまアポロの宇宙飛行士だが、それに比べると、デザインセンスは、(形態は全く違うとはいえ)マリア(「メトロポリス」)やロビー(「禁断の惑星」)に近い。どこか幻想的で..ほとんど、恐い。これは、素晴らしい。

 初台に移動。旧手塚治虫邸の探索である。番地は判っているのだが、その番地がカバーしている範囲が、かなり広い。幹事のKさんは、事前に下見を済ませていて、どれがその家であるかを、把握していた。つまり、実際におこなったのは、その範囲を皆(10数名)で歩き回って、どれがその家であるかをあてる、クイズであった。

 で、正解の家の前に皆が集まって、写真を撮ったり、その家からの(確か、富士山が見えると手塚治虫が記している)風景を確認したり、手塚治虫が編集者から逃げるために伝い下りた松の木は、あの、隣家の松の木であろうか、と、詮索したりしていたのだが..

 ..そのさなかに、隣家の(主婦と思われる)若い女性が、徹底的に怪訝な視線を我々に向けながら、帰宅してきたのである。私は、彼女と目を合わせてしまったのだが、それはまごうかたなき、犯罪者(あるいは宗教系カルト集団)を見る目であった..(私は、無論、偶然目があっただけ、偶然そこに居合わせただけの、通行人のふりをした。当然のたしなみである。[;^J^])

 同じく初台の(オペラシティ地下の)「手塚ワールド」で、しばらくショッピングなどしてから、新宿は歌舞伎町へ。「双船」という店に予約を入れてあったのである。朝までとってあるらしいが、私は無論、「ながら」(東京駅23:43発)で帰るつもり。

 道中、幹事のKさんに、iモードのことを、色々聞く。確かに便利そうである。年内に契約者1000万人突破は確実らしいし、ここまで来ると、「国民・総iモード」である。周回遅れもほどほどだ。導入しどきか..

 双船では、いろいろくっちゃべったが、記憶している範囲から抜粋すると、(私がしゃべりまくっていた話題なのだが、[;^J^])シンポジウムからの引っ張りで、アトムに後継ぎがいない、ということ。人間的なロボットがないわけではないが、アトムに匹敵するものは、ほとんど記憶に無い。鉄人28号の系譜には、マジンガーがいる。この流れで我々が最初に思い出すのは、始祖たる鉄人ではなく、マジンガーでありガンダムだろう。つまり、滔々たる流れがある。アトムの系譜で思い出すのは、いつまでたっても、アトムである。これを越えることが、ついに出来なかった。むしろ、サイボーグか。日本の漫画・アニメには、素晴らしいサイボーグたちがいる。エイトマン、009。仮面ライダーも。逆に、手塚治虫は、印象的なサイボーグを生み出さなかった..

 ..この時、確か、ドラエモンが反例として挙げられたのだが、私は却下したような気がする。あれは「ロボット」ではなく、「魔法使い」あるいは「妖精」だという理由からだったと思うし、シラフの今でも、そう考えている。「アラレちゃん」が挙げられたかどうかは、記憶に無いが..アトムの系譜と言われればそうかも知れないが..ちょっと違うと思わない?

 22:50頃に、新宿・歌舞伎町の双船を辞去。東京発23:43の「ながら」には、楽勝のはずであったが..

 気が付くと、中野である。新宿駅のホームで、逆方向の中央線に乗ってしまったのである。何を慌てているのだ。急がなくてもいいのに。中野で乗り換えて..

 ..車内放送によると、次は高円寺。さすがにうろたえた。何故、同じことを2回やった。たいして酔ってはいない。それは確かに、双船で水割り(ストレート)を何杯飲んだか、記憶に無いが、しかしそれは単に記憶に無いだけであって、私の意識は、主観的には、これほど明晰なのだ。これは単に間違えただけだ。2回続けて。

 高円寺に着いた時、ホームの反対側車線に、東京行きがスタンバっていたのだが、間一髪、乗れなかった。次の便は、(さっきのもそうだったかも知れないが、)各駅停車である。これに乗って、新宿 → 四谷 → 東京 と向かうと、東京発23:43の「ながら」には、間に合わない。ならば、新宿で山手線内回りに乗り換えて、渋谷経由で品川に先回りして、「ながら」を捕まえる..この場合、品川23:53で良い。新宿で、タイムロスほとんど無しで、山手線内回りに乗り換えられれば、勝機はある,,

 ..が、新宿駅で、次にやってきた山手線内回りは、(品川の、ひと駅手前の)大崎止まりであった..

 この、誰にもぶつけようの無い、やり場のない怒りを解決するには..そのためには、今夜の宿は、新宿のカプセルホテルでも、品川プリンスホテルでも、駄目だ。

 渋谷の、和風ラブホテル。これでいい。

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*2000年02月27日:「フランケンシュタイン」


 というわけで、いつまでもこんなところで寝ていても仕方が無いので、6時前にチェックアウト。7時過ぎのこだまで浜松へ向かい、9時半前に帰宅。予定通り「ながら」で帰宅していても、結局この時刻近くまでは、フトンの中でウダウダしていただろうから、まぁ(金はともかく)時間のロスは、ほとんど無かったわけだ。

 ジョーシンへ。今週のDVDは「フランケンシュタイン」(1931)。さすがにこれは、観たことがある。但し、大昔のことだったので、(湖畔の、あの有名なシーンは覚えていたが、)ラストシーンが記憶になかった。ええんか、ハッピーエンドで。こいつのせいで、何人死んだと思っているんだ、こらっ!

 ..と、憤慨しつつ「幻想文学大事典」(国書刊行会)で、この映画の項(及びリンクされている関連項)を調べたら..なるほどね。そういう、浅い話では無いわけか。なんて便利な本なんだ!

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*解説


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Mar 1 2000 
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