*1997年09月15日:追憶の街角
*1997年09月16日:スティーブの真意
*1997年09月17日:親知らずを抜く
*1997年09月18日:ちょっと傲慢じゃない?
*1997年09月19日:発作的ひとこと
*1997年09月20日:重労働の第一日
*1997年09月21日:重労働の第二日
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*1997年09月15日:追憶の街角


 それは、夢のように美しい街だった。

 5年前の11月。季節も良かったのだろう。小さな駅の改札を抜け、階段を上がって駅前広場に出た時、私は思わず嘆声をあげた。

 人通りもまばらな、落ち着いた煉瓦の壁に囲まれた広場の中で、秋の日の午後の陽光を一杯に浴びて、琥珀色に輝く落ち葉が、爽やかな風に吹かれてキラキラと渦巻いていたのである。

 そのセピア色の情景は、まさに絵本の中の世界だった。ここが日本であるとは、全く信じられなかった。

 閑静でこざっぱりとした、小さな小さな街だった。その駅前広場から伸びる商店街は、すぐに終わって、住宅街になる。店の種類も少なく、いずれも小さい。しかし例えば公民館には、小さな図書室もある。もちろん、この街だけで生活しようとすれば、それは不自由に違いないが、実は電車一本で、渋谷に40分で出られるのである。不便どころではない。つまり、大都市の魅力と田舎の魅力を、共に満喫出来る街なのだった。

 そして、セピア色の煉瓦で統一された、駅前広場の美しさ! 聞けば、この広場では、年に数回、市民オペラが、(恐らくは演奏会形式で、あるいはオーケストラも電子楽器や録音で代用されているのかも知れないが)上演されるのだという。

 私は、ただ一度だけ訪れた、パッセージャーに過ぎない。住めば、嫌なところは多々あるのであろう。この街の“色合い”も、すぐに飽きが来るものかも知れない。しかし、5年前の私の目には、この街は確かに“ユートピア”として映ったのである。

 この、夢のように美しい街の名は、田園都市線つくし野駅。現在の佇まいは、知らない。もう一度訪れるつもりもない。

 なぜなら、“夢”と“追憶”の中で育まれた美しさを、“現実”が越えられるはずが、無いからだ。

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*1997年09月16日:スティーブの真意


 それにしても、スティーブ・ジョブスは、恨み重なるアップルを潰しに戻ってきたとしか、思えない。モトローラを互換機ビジネスから追い払って、どうする気だ? アップル社としては、当座は楽になるのかも知れないが、この暴挙によってMacOSプラットフォームが被ったダメージは、計り知れないぞ..

 ..という理屈が、聡明な彼に解らないはずがないのだ。彼は本気でアップルを“終わらせる”つもりなのか?

 「アップルを潰して、アップルとネクストの技術を手土産に、マイクロソフトの取締役に就任するつもりなのだ」、という観測をどこかで読んだ記憶があるが、これは、アップルが潰れると(独禁法がらみで)マイクロソフトが困ること、及び、スティーブがビル・ゲイツの子分に甘んじるタマとは思えない、という2点から、少々無理な見方である。

 かと言って、「アップルを潰すことによって、結果としてマイクロソフトを困らせることが出来る、すなわち、古巣への復讐とビル苛めの一挙両得」、つうのも、いくらなんでも。[;^J^]

 ま、面白い見世物だ。当分の間、ドタバタを楽しませてもらおう。

 で、目を日本に転じて見れば、NECがPC98規格のマシンを作るとな。これからはPC98とPC98の二本立てか。[;^J^] しかし、DOS/V機は作らないっ、と、明言していた様な気が..あ、これから作るのは、DOS/V機ではなく、PC98規格機なのでしたね。失礼しました。[;^J^]

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*1997年09月17日:親知らずを抜く


 アップルの“臨時”CEOに、スティーブ・ジョブスが就任した。ほとんど漫画的展開である。

 日本の政界も、負けずに漫画している。橋本龍太郎に佐藤孝行を押し付けた中曽根は、内閣を倒すつもりなのか?(そんな複雑なことを考えられる頭はなく、単に惚けているだけ、というのが真相なのだろうが。)

 ..などという、日米児戯合戦はどうでも良くって..


 2ヶ月ほど前から、歯周炎の治療で歯医者に通っているから、4本とも健在な親知らずが、全部、ろくでもない方向を向いていることは、判っていた。(上の2本は外向き。下の2本は完全に歯茎に埋まって、一番外側の大臼歯を真横から押している。)ただ、諸般の事情から、親不知を抜くことに対する恐怖感があり、できれば4本とも、このままつきあっていければいいなと、思っていたのだが..

 どうも、10日ほど前から、下の右奥歯のさらに奥が、プクプクと膨れ上がって、別に食事や会話の邪魔になるほどではないが、鬱陶しくて仕方がない。これが親知らずの“腫れ”かと思ったが、痛まないのが不思議。

 で、今日、歯医者で診てもらったら、これは下の(埋まっている)親知らずのせいではなく、噛み合わさるべき歯がない、上の親知らずが、歯茎を苛めて腫らしたのだと。


「もう抜いちゃいましょ、これ」
「あ、えと、はい、でも、その」

と、心の準備をする間もあらばこそ、ささっと麻酔注射を打たれ、しばらくガサゴソいじられたと思ったら、あっけなく抜けてしまった。上の方は、まだしも素直な向きに生えていたおかげである。(とにかく、頂上が歯茎の上に出ていた訳だし。)

 2日分の化膿止めと痛み止めをもらった..ということは、2日は落着かないということか。とりあえず明日、傷口を見てもらうのだが、常時血が滲んでいるらしく、喉の奥の方が、しょっぱく潤んでいて、とても美味しい。[;^.^]

 今夜は、酒を飲めないのが、つらいところだ。

 出来れば痛み止めを飲まずにすませようと思ったのだが、ジワジワと痛み出し、眠れなくなりそうなので、ここでやせ我慢をする必要無し、と、0時頃に痛み止めを飲んで、フトンに潜り込む。

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*1997年09月18日:ちょっと傲慢じゃない?


 類は友を呼び、漫画は漫画を呼ぶ。今日の漫画ニュースは、カシオの43歳の中間管理職。納品遅れを顧客に責められ、言い訳を作ろうと自社の倉庫に放火。これはこれで気持ちは解らないでも..いやいや。[;^J^]

 ちょっと、中っ腹の立ったことが一件。某ML(メーリングリスト)で、量が多すぎて読み切れない、と言う理由でMLから脱退する人を、所詮はMLに不適なのである、と言い放った人がいた。

 曰く、大量のメールを全部読もうとするからだ、金を払ってダウンロードしているから読まなきゃ損だと思うのだろう、情報の取捨選択が出来ないのか、等など..

 何を偉そうに。

 彼らが、“本当に”量的に読み切れなくて脱退した、と、考えているところが、ちゃんちゃらおかしい。有用なメールが10本に1本でもあれば、わざわざ脱退したりはしない。それこそ、ハードディスクに溜めておいて、後日、(例えば興味のある固有名詞で検索するなどして)片づければいいのである。

 つまり、その人に取っては、“全部”ゴミメールだったのだ。あるいは、有用な情報が(10本に1本ではなく)100本に1本しかなかったのだ。(すなわち、近似的には0だったのだ。)

 そういう理由で脱退するとしても、日本的な礼儀作法を身につけた人が、「ゴミメールばかりなので抜けます」などと言う訳がない。「私の処理能力が至りませんで、とても読み切れないので、やめさせていただきます」と、角を立てずに婉曲な言い回しをするのが、普通である。

 つまり、その人たちの「情報の取捨選択能力の欠如」を謗った、上記の人こそ、行間を読む能力が欠如していたのである。あるいは、前記の日本的謙譲表現が解らなかったのだとすると、(日本的な意味での)礼儀知らずかも知れない。

 ..と言うことを、そのMLでは、もちろん言いはしない。無意味なフレーミングを引き起こす趣味は、無いからである。

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*1997年09月19日:発作的ひとこと


 大根足には、ルーズソックスが良く似合う。(喧嘩を売っているのか、お前は。[;^O^])

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*1997年09月20日:重労働の第一日


 早朝7時半頃、宅配便からの電話で叩き起こされる。東急ハンズからの荷物を、代金引換(16,222円)で届けるがよろしいか、とのこと。なるほど、現金の持ち合わせがあるかどうか、(無駄足にならないよう)事前に確認を入れるわけか。もちろん用意している。配達日は今日、と指定したのは私なのだから。

 午前中に、荷物が届く。組み立て式の書棚(スライド式)である。高さは90cmで、大き過ぎず小さ過ぎず、一人で取り回すには丁度良いサイズである。ふたつ重ねることも出来るし、キャパとサイズと価格のバランスが、実に良い。これ以上大きく重いと、組み立てるのも移動するのも大変である。(スライド式でなければ、この限りではなく、高さが2メートル近くても、なんとかなるものだが。)

 組み立てに1時間強。本を詰め込む前に、ちょっと買い物。(書棚に隠れる壁コンセントからの、板型の分岐ソケットが必要だったからだ。)

 小さな電器屋でソケットを買ってから、図書館へ。ここ1年ほど、毎月17日の次の週末に、図書館に通っている。手塚治虫漫画全集の一連の別巻に収録されている、エッセイ等の初出誌の出版元を、調べるためである。(単行本であれば、出版社名まで記載されているのだが、雑誌の場合には、出版社名が書かれていないのである。)浜松中央図書館で、国会図書館の逐次刊行物目録を調べるわけだ。

 気をつけなくてはならないのは、同じ誌名の雑誌が複数存在することである。ほとんどの場合、手塚治虫の作品(エッセイ等)が掲載された年月日等から、同定できる。

 この目録に存在しないものも少なくない。今回の調査から例を引くと、非常に意外だったのは「Number」が見当たらないことである。これほどのメジャー誌が。(「くるめがわ <東久留米タウン誌>」が無いからといって、国会図書館を責めたりはしないが。[;^J^])

 目録の不備もある。蔵書があって、目録に記載されているのに、出版社名が欠落しているのである。(「一枚の繪」など。)この場合は、実際に借り出して、現物で出版社を確認しなければならない。まぁ「Number」「一枚の繪」などは、(廃刊になっていなければ)書店で探す方が早いだろうが。

 銀行で金を下ろし、来週末27日深夜東京発の「ムーンライトながら」のチケットを確保。お気楽カルミナ練習会用である。ヤマハで久々にCDを購入して(ベルリオーズを2点)、帰宅。

 さて、組みあがったスライド式書棚の奥の方に、B6版の書籍(具体的には、手塚治虫漫画全集)を詰め込んで、前面のスライドを動かしてみたら..引っかかる。サイズがギリギリ過ぎて(これは、東急ハンズで現物を見た時に、僅かに危惧した点であるが)、ほとんど1〜2ミリの余裕しかない。少しでも本が傾いたり、書棚全体が(例えば軽い衝撃で)動いたり、あるいは、書籍自体のサイズの公差で奥行きが長かった場合、引っかかってしまうのだ。

 そこで、鉋(カンナ)を買いに行く [;^.^]。前面のスライド書架の背面の、不要な出っ張りを削ればいい。1センチ近く出っ張っているが、これは5ミリでも、強度的構造的に問題は無い。つまり、5ミリ削ればいい。

 しかし..鋸(ノコギリ)作業は、今でも年に1〜2回、やらないことはないが、鉋がけなど、下手すると中学校の技術家庭科の授業以来だぞ [;^.^]。その証拠に、二枚刃の物を買ったのだが、裏の刃の用途が、全く判らん(思い出せない)[;^.^]。四半世紀ぶりでは、無理も無いことである。

 まぁ、なんとかかんとか、大汗をかきながら、玄関前のスペースで背面を削る。スライド書架はふたつ(2パーツ)あるのだが、そのうちひとつの背面を削って、本体に嵌めてみたら..見事に、ひっかからなくなった。もうひとパーツは、暗くなってきたことだし、重労働で指先も震えているので [;^.^] 明日に回す。

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*1997年09月21日:重労働の第二日


 昨日の続きである。朝っぱらから、玄関前でガリゴリガリゴリ音を立てるのは、アパートの隣人たちに迷惑なので、11時頃までかかって、先に、部屋の中の書棚群の移動をすませる。

 ..と、軽く書いたが、これはしんどかった [;_ _]。書籍を満杯に詰めた書棚が動くわけが無いので、いったん、書籍を床に下ろして、移動して、また、元に戻すのである。これの繰り返し。さすがに、全部出し入れするのはあまりに面倒なので、半分位床に下ろしたところで、残り半分の書籍が搭載されている書棚を、渾身の力を込めて動かす。全部出し入れするのと、どちらが楽か、落とし所の判断が難しいところではあった。

 とにかく、目一杯不幸な午前中であった [/_;]。来年の春頃には、アパートの直近に大きな道路が開通する見込みで、そうなると今の静かな環境は失われる故、引越しすることも考えていたのだが、そんな気は完全に失せてしまった。これだけの本を動かす位なら、俺は老衰で死ぬまで、ここから動かん [/_;]。

 無論、引越し業者に頼めば、書籍の梱包も移動もやってくれるのであろうが、そういう作業を人任せにすることなど、到底考えられない。

 本が傷む。

 本が穢れる。

 仮に引越し業者を雇うとしても、書籍のパッキングだけは、(例え腰を壊そうとも)自分でやらねば気がすまない。あるいは、書籍を“正しく”取り扱う方法を知っている選民階級の知人をバイトに雇うか、だ。(この祝福された階級は、オタクと呼ばれることもある。)

 11時から、不幸の追い討ち [/_;]。鉋がけ作業の後半である。半死半生になりつつも、それでもさすがに昨夕よりは要領良く削りあげる。

 かくしてようやく、高さ90センチの、ハーフサイズのスライド式書棚を、予定の位置に設置。奥の方には「手塚治虫漫画全集」の後半の150冊ほどを詰め込み、前面のスライド書棚には、吾妻ひでおの新書サイズの単行本の全部と、B6サイズの単行本の大部分を詰め込む。いい案配だ。

 早速、東急ハンズに電話して、追加発注。これと同じスライド式書棚、及び、これの上に積むことのできる、外形サイズは同一だがスライド式ではない書棚、計2点である。部屋の中の模様替えによって、これらを置くポイントを、3箇所確保したのだ。(それぞれ上下に積むとして、計6点、導入出来る。)スライド式の物を、上に積むことも可能だとは思うが、取り敢えずそれは想定されていない使い方である。(即ち、スライド式書棚には、“下の”書棚と接続する仕掛けが、用意されていない。)まぁ、納品されてから、試してみよう。地震で倒壊されるのは、やはり困る。配達日は、今月30日の棚卸し休日を指定する。

 別に今すぐ、これだけ必要だという訳ではないのだが..こういう“シリーズ物”の家具は、シリーズが廃止になった時が、痛いのだ。接続して拡張しようにも、接続する相手が無くなってしまう。過去に何度も、痛い目にあっている。いつ、市場から無くなっても困らないように、きりのいい分ずつ、まとめ買いする必要があるのだ。

 15時を回って、なんとか片付いた。ちょっと街中へ出てみたら..おやおや。とある赤ちゃん用品専門店の一部が改装されて、「Military Surplus Shop RAMBO」になっていた。全然違和感が無いんだ、これが [;^J^]。

 いつもの居酒屋に、晩飯を食いに行く。普段は、瓶ビール2本、または、瓶ビール1本+生酒1本なのだが、今日は、大生2杯。いやはや、美味いこと。

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*解説


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Sep 23 1997 
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