*2015年06月29日:「妖怪ハンター」ムック
*2015年06月30日:バースデイ..
*2015年07月01日:エアコンバッドコンディション
*2015年07月02日:エアコンバッドコンディション2
*2015年07月03日:夏オフホテルようやく予約 [;_ _]
*2015年07月04日:国会図書館/鴨居玲展
*2015年07月05日:フィラデルフィア美術館浮世絵名品展/画鬼暁斎展
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*2015年06月29日:「妖怪ハンター」ムック


 諸星大二郎『妖怪ハンター』異界への旅が、届いた。実はつい最近、このムックの存在に気がついたのであった [;^J^]。これには妖怪ハンターシリーズの新作「雪の祭」も載っているので、ファンなら見逃せない内容だよ。[^.^]

 帯を見て気がついたのだが..諸星大二郎『暗黒神話』と古代史の旅も、買い逃しているではないか [;^.^]。買っておく必要、あるんだろうなぁ..

 そういえば、そろそろ「暗黒神話 完全版」が届く頃だ。これは「完全受注生産」で、申し込みの締め切りはとっくに終わっているのだが、今回、見逃していた(気がついていなかった)人も、まだ、チャンスはあると思うよ。だから、気を強く持って![;^J^]

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*2015年06月30日:バースデイ..


 ..って、そんなに楽しい(嬉しい)のかなぁ..

 テレビで芸能人(たとえばももクロのメンバーなど [;^J^])が、サプライズで祝われて感涙に咽(むせ)んだりしているけど..私、自分の誕生日で感激のあまり泣いたことなんか、多分(半世紀以上の)人生において、一度もないぞ。[;^J^](← 乾ききった、爽やかな魂の持ち主。[^.^][;^.^])

 そもそも、誕生日に限らず、何か「特定の日」から数えて丁度N年目に「祝う」という慣習自体、感覚的に理解できない。その「特定の日」(誕生/結婚/出版/開業/独立戦争の勝利、等など)には、確かに意味があるとしても、それから365日目、730日目、3650日目等などに、意味があるとは思えない..ま、これを言い出すと、人類(文化)史に喧嘩を売っているも同然なのでここらで矛を収めるし、ここだけの話としておいていただきたいが..

 ..閑話休題。[;^.^]

 誕生日の(泣くほどの)「嬉しさ」は、誕生日自体の嬉しさももちろんあるのだろうが、誕生日を「祝われる」(あるいは祝ってくれる「友情」の存在)にあるのだろう。それは、私にも理解できる。(このことと、「私(倉田)が誕生日を嬉しいと思ったことがない」事実を組み合わせて掘り下げることを、禁ずる。[;^.^])

 もちろん、私にも、はるかな昔のことになるが、誕生日を祝われた記憶はある。多分、まだ北九州の黒崎にいた頃で、つまり、9歳以前。クラスメートが5人ないし10人程度、来てくれただろうか。親父ががんばって、お菓子(主材料はカステラ)で高さ30cm程度の「ロケット」を作ってくれたのだが(女の子じゃあるまいし、「お菓子の家」というわけにはいかんでしょう [^.^])、所詮はシロウト細工。先端のバランスが崩れて少し傾き、実にリアルな「ペンギンロケット」になってしまったことであるよ..[;^.^]

 ..私の「誕生日」の記憶といえば、まぁこんなところである。(まとまった行事としては、ね。今でも毎年、母からおめでとうコールがかかってくるし、それは(冒頭と矛盾しているにせよ)大変嬉しいのだが。)

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*2015年07月01日:エアコンバッドコンディション


 エアコンが、おかしい。冷房が全然効かない。リモコンで電源を入れると、室内機の電源LEDが点滅している。この状態は、取扱説明書には記載されていない..が、記憶にはあるぞ..日記を検索して..あった! 数年前にメーカーのカスタマーサポートにこの症状を相談したところ、即答で「室内機のコンセントを抜いて、1分間待ってから挿し直せ」とアドバイスされ、それで直ったのである [;^J^]。聞けば、電源LEDの点滅とは、室内機と室外機の通信が出来ていない状態だそうで、コンセントを抜いて、言わば「冷ます」ことによって、この状態をリセットできるのであった。(取扱説明書に書いとけよ、と、言いたいところだが。[;^J^])

 今回もそれか、と、室内機のコンセントを抜き、数分間待ってから挿し直したのだが..前回と異なり、症状が改善しない。う〜む、数年間のあいだにハードがさらに劣化して、この程度の緩い対策では効かなくなってしまったか..

 ..とか困っているうちに、機能が回復し、冷え始めた。もちろん、今回のちょっとした問題点、先送りである。[;^J^]

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*2015年07月02日:エアコンバッドコンディション2


 今週末の土日に上京するのだが、飲みのアポがまとまらなかったので、土曜日には久しぶりに横浜の実家に帰省することにした。その絡みで予定が若干、組み直しとなり、新幹線上京から(より廉価な)バス上京に変更。ネットでチケットを買う。

 エアコン、昨夜の症状、再発。昨夜同様、室内機のコンセントを抜いて数分間待ってみたが、今夜は待っても、症状、回復する気配も無し。小雨そぼ降る中、外に出てみるが、確かに室外機、完黙 [;^J^]。動く兆候、全く無し..こりゃ、修理かなぁ..今はまだ梅雨で、夜は涼しいからいいようなものの、これから本格的に暑くなったら、辛いぞ..それにしても、いつ、修理してもらう? 平日に有給休暇を取ってる余裕なんかないし、(仮に週末に修理に来てくれるとしても)土日は大概、浜松にいないし..[;^.^]

 とにかく、今夜のところは仕方がないので、雨が吹き込む可能性はあるが、窓を細く開けてみる..自然の風の、心地よさ。[;^.^](エアコンとは比較にならない..(← 卓袱台返し。[;^.^]))

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*2015年07月03日:夏オフホテルようやく予約 [;_ _]


 終日、本降り。

 深夜、ようやく、夏オフ(8月1日〜2日)のホテルを予約した。(後泊するので、2日分。)会場から至近で至便な幡ヶ谷のホテルは、どこもとっくに満室 [;_ _]。新宿にすら手頃なホテルが見付からず、そこからさらにメトロで2駅先のホテルを押さえた。夏オフの日程は遥か以前に決まってたんだから、さっさと予約しておけばいいものを、毎年毎年、アクションを取るのが遅過ぎる..[;_ _]

 念のためフォローしておくが、まだ新宿には、1ヶ月先のホテルはいくらでもある。ただ、大荷物があるので、カプセルホテルはNG。高すぎるホテル(概ね1.5万円/泊以上..金銭感覚が貧乏ですまんね [;_ _][;^J^])もNG(← 数時間、眠るだけなんだからね)。また、超格安ホテルもNGとさせていただいた。[_ _](かつて利用してみたことはあるのだが..(私の主観では)ちょっとね。[;^J^])

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*2015年07月04日:国会図書館/鴨居玲展


 6:05に発つ予定だったのだが、起床したら、6:05。[;^J^](何も、ぴったり時間を合わせることはないだろうに。[;^.^])。いろいろ省略して、瞬速で6:14に飛び出す。もともと余裕を見ての「6:05発」だったので、さほど無理せず、浜松駅北口ロータリー7:00発の渋谷新宿ライナー浜松2号に乗れた。やれやれ。ほぼ定刻の10:50、渋谷着。曇天。りそなで金を下ろす。

 11:30、久々に国会図書館。吾妻ひでお調査は、1件、確認のみ。手塚治虫調査は、多少の収穫あり。13:00に退出して、秋葉原へ。少々足で捜して、USB HDD(2T)を2台、買う。

 14:35、東京ステーションギャラリー。「没後30年 鴨居玲展 踊り候え」である。会期の終わり際(7月20日(月・祝)まで)だが、未見のあなた、これ、絶対観とくべき!

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 これは初期の作品、「時計」。誰もが一度は通る道(作風)かな。まだ模索段階。



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 タイトルはいずれも同じ、「静止した刻」。制作年も同じで、1968年。いきなり世界が変わったでしょう。鴨居玲の出世作。面白いのは、どちらも骰子(サイコロ)の描写が間違っていることである [;^J^]。右図では「3」の面がふたつあるし(論外 [;^.^])、左図では「1」の面と「6」の面が隣り合っている。これもあり得ない。骰子の面は、反対側との合計が「7」になるように配置されているからである。(ちなみに、キャプションでも図録の解説でも、前者(「3」がふたつ))には言及しているが、後者についてはスルーしている。気が付かなかったのかな。[^.^])画家としては、別にこんなところに意味はこめておらず、単にアバウトなだけだったのだろうが..それにしても、実物を写生しなかったのだろうか? ちょっと(かなり)不思議ではある。



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 左から、「りんご」「風」。私が命名するところの「老婆の白髪の存在感」シリーズである。鴨居玲による老人の描写力(その皺と頭髪!)たるや、尋常ではなく、特にこの2作の白髪(蓬髪)に至っては、目が離せないほどのものなのであるが..複製では伝わらないだろうなぁ..この、物凄いマチエール..

 鴨居玲が描く老人は、一見、「化け物」あるいは「エイリアン」に見えるかも知れない。しかしすぐに気が付くはずだ。その「崇高な美しさ」に。彼がどれほどの想い(尊敬)を込めて、この老人たちを描いているかに..特に「風」は、凄い。本当に、凄い..



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 「おっかさん」。これは楽しい [^J^]。シリアスな作品が並ぶ中で、思わず笑みがこぼれる一枚である。明らかに泥酔している、いい歳こいた放蕩息子(確実に無職)が母親に叱りとばされている、この微笑ましさ [^.^]。いやまったく、人ごとではな 私の近未来図 ..いやいや、まさかそんな..[;^.^]



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 これが凄い..「廃兵」。実物は非常に大きいのだが、とにかく、迫力に圧倒されて、足がすくむ..その大画面から放射されてくる、焼け付くばかりの暗い情念..両腕を失った彼の魂が、心穏やかなものだとは、思えない..表層的には、静謐であるかも知れないが..覚悟の要るスケッチであっただろう..物凄い傑作である..



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 「1982年 私」..この、鴨居玲の「最高傑作」は、展示作品中でも最大のサイズの作品である。そしてまた図録の中でも特別扱いで、この作品だけは頁をまたいで見開きに印刷されているものだから、スキャンできず、やむを得ず絵葉書からスキャンしたので、画質が悪くなっている..なに?この逆説..[;_ _]凸

 ..それはともかく、恐ろしい作品である。絵筆もパレットももたず、真っ白なキャンバスに向かって(あるいは目を背けて)放心している画家は、「俺にはもう、描くものがない..なんにもなくなっちまった..」、と、呆然としているのである。クリエイターにとって、これほどの恐怖が、これほどの地獄が、あるであろうか..(私は、足がすくんで、動けなくなった..)

 回りを取り囲んでいるのは、彼がこれまで描いてきた(数々の傑作をものしてきた)素材(モデル)たちである。そして彼らは「キャンバスの中」にはおらず、その「外側」で、画家を背後から周囲から、取り囲んでいる。嘲るように..私には、彼らが「地獄からの使者」のように見えてならない..

 考えるまでもなく、「メタ構造」の作品である。「描けなくなった自分と空白の作品(白紙)を“描いている”」からだ。画家は、この荒技で、この地獄から這い上がろうとしたのだろうか。突破口を見出そうとしたのだろうか。あるいは、地獄に堕ちていくという、訣別の辞として描いたのだろうか..



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 そしてここからが、芸術家の「業(カルマ)」を痛感させる、一群の作品である。「何も描くことがなくなった(昔の題材(老人/酔っ払い、等など)を描けば、それなりの作品には仕上げられるだろうが、それは自己模倣/自己反復に過ぎず(考え方にもよるが−そういう画家もいるが)画家として「既に死んでいる」状態である)」鴨居玲は、ひたすら「自画像」を描き続ける。これまでも自画像を描いてはいたのだが、「1982年 私」以降は、何を描いても自画像になってしまう。(多少の例外はあるにしても。)それしか、描けないのである。そしてそれらはいずれも、輝くばかりの傑作なのである! 左図は「出を待つ(道化師)」。右図は「酔って候」。追い詰められた画家の作品とは到底思えない、この色彩と描線を見よ! クリエイターの「魂の地獄」と「作品の質」と(そしてここが肝要なのだが)「鑑賞者に与える感動/衝撃」とは、リニアに対応していないのである..



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 そしてこれがまた恐ろしい作品。左図、「肖像」..ある意味、達観したかのような絶望の表情(仮面)を外した画家の「中」には、「もう、何もない」のである。「何も残らなかった」のである..(これが正しい(妥当な)観方かどうかはわからないが、私は思わず、内省してしまった..私もそれなりの仮面(外面(そとづら))を装着しているのだが、これを外したとき、「中」に「何かあるだろうか?」..)

 最後に、多数展示されているデッサンから1枚。(これも、今回の回顧展の目玉のひとつである。)どれも素晴らしいスケッチなのだが、「月に叫ぶ」(右図)を選んでみた。これは1973年、「1982年 私」の9年前の作品である。



 16:30に退出。18:00、横浜・鶴ヶ峰の実家。帰宅時には、すっかり、雨。

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*2015年07月05日:フィラデルフィア美術館浮世絵名品展/画鬼暁斎展


 朝から雨。(梅雨時なんだから、仕方がない。)実家前のバス停を8:41に発つバスで出発。開館時刻をちょっと過ぎた10:05、三井記念美術館着。「錦絵誕生250年 春信一番!写楽二番!フィラデルフィア美術館浮世絵名品展」である。会期は8月16日(日)までなのだが、前期は7月20日(月・祝)までで、作品リストによると前後期でほぼ全作品「総替え」なので、興味をもたれたかたは、急ぐほうがいいよ。[;^.^]

 えーと、予めお断り。広重とか北斎とか写楽とかの広く知られている作品は、基本的に言及省略 [;^J^]。キリないから。[;^J^](多少は、しますけど。)それと、この展覧会については、各作品の紹介に際して(前後の展覧会とは異なり)画像スキャンではなく、画像検索結果へのリンクとさせていただく。[_ _](こういうのを(日記に限らず)文書における「メリハリ」という。「リズム」と呼んでも良い。少なくとも「手抜き」ではないのだわかったかいまそう考えたそこの読者![;^.^]凸)

 鈴木春信の「やつし芦葉達磨」画像検索結果)は、枠線を使わず色彩だけで表現された着物が美しい。同じく「伊勢物語 武蔵野」画像検索結果)も、少ない色数を効果的に生かしている。

 初代喜多川歌麿の「歌撰恋之部 稀ニ逢恋」画像検索結果)は、とにかく美人![^.^] 東洲斎写楽のフェイバリット作品を挙げるのは容易ではないが、少なくとも現時点では、「三代目市川高麗蔵の志賀大七」画像検索結果)である。これが観られて、幸せだ。(明日にはまた、マイフェイバリットは変わってしまうかもしれないけど。[;^J^])

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 歌川国芳も、もちろんきている。「かごのとりすずめいろどき」は、うまく画像検索できないので、絵葉書からスキャンした。画質が悪いがご勘弁 [_ _]。もちろん、遊郭の男女を雀に置き換えた戯画なのだが、カゴの中で立ち上がっている女雀は、明らかに(自分をからかった?)男雀と喧嘩していると思しく、なかなか可愛い。[;^J^]



 初代歌川広重も、結局、スルーは出来ないなぁ..「諸国名所 宇治川ほたるがりの図」画像検索結果)、そして「富士川上流の雪景」画像検索結果)の雄大さ。

 12:00過ぎに退出。昼食は、最近某番組(「ぶらぶら美術・博物館」)で知ったスポット、新丸ビルの7Fである。いくつもの店があるのだが、ヘンリーグッド7で、ノルウェーサーモンの揚げだし..なんか、DJ機材が用意されているんだけど [;^J^]..そういうイベントもありの店なのかな。

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 このフロアにはテラスがあり、丸ノ内界隈を、実に「良き高さ」から一望できる。実は7Fの店で注文したカフェや食事は、このテラスにテイクアウトすることができるのだが、今日は微妙に雨模様なのでそれはやめておいたのだが..食後、ざっと散策してみた。大変気持ちが良く、風景もフォトジェニックである。ごらんのとおり、東京駅に対してはベストポジション。少し離れているが皇居もよく見える。ちょっと通ってみようかな。



 雨はギリギリ降ってない空模様。少し歩いて13:10、三菱一号館美術館。「画鬼暁斎 幕末明治のスター絵師と弟子コンドル」である。これも前期は、8月2日(日)までだから、(「フィラデルフィア美術館浮世絵名品展」の前期展示ほどには逼迫してはいないが)関心ある向きは急がれよ。

 河鍋暁斎と、その弟子にして日本の近代建築の父とも言うべきコンドルのジョイント展覧会であり、三菱一号館も、コンドルが設計したものであり、そういう縁もあって企画されたのであるが、以下、図録からスキャンしてご紹介するのは、暁斎の作品に絞らせていただく [_ _]。コンドルの絵も実に達者なものであり、数多く展示されている設計図や写真も興味深いものではあるが、工数が..[;_ _][;_ _][;_ _]

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 まずは、動物画の傑作から。左図は出世作、「枯木寒鴉図」。右図は「鯉魚遊泳図」。どうてす、いきなり「ガツン」と来るでしょう。



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 ユーモラスな作品を2点。左図は「布袋の蝉採り図」..野暮なコメントなど、不要だわな [;^J^]。右図は狂言画、「伯母ヶ酒図屏風」。ケチで酒を飲ませてくれない伯母を、鬼が出たと偽って恐がらせて、その隙に酒を飲んでいた甥。油断してバレちまった瞬間のようである。まったく人ごとでは..いやいや。[;^.^]



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 再び動物画を2点。左図は「月に狼図」..目が恐ろしい。銜えているのは、もちろん、人間の生首である。右図、「竹虎之図」は、力強くも、どこかユーモラスである。



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 暁斎としては比較的珍しい山水図からは、「秋冬山水図」を。好みにもよるとは思うが、特に右幅の「秋」が良い。



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 美人図を2点、ご紹介。(一筋縄ではいかない奴を、敢えて。[;^J^])左図は「暁斎楽画第九号 地獄太夫 がいこつの遊戯ヲゆめに見る図」で、文字どおりの「地獄太夫」なのであるが(「地獄太夫」がわからん人は、ぐぐれ。つい最近、別の展覧会でも紹介したと思う)、右図、「極楽太夫図」も、一見して吉兆紋様に彩られているが、よくよく見ると地獄の比喩がそこかしこに、という、卓抜な構想。



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 そして最後に、私が大好きな、大好きな傑作を2点! 左図、「横たわる美人に猫図」。どうです、いいでしょ、いいでしょ! けっしていわゆる「美人」ではないんだけど、この物憂げな表情! 眠いんだか怠(だる)いんだかやる気がないんだかわからない(つまり実に猫らしい)猫の風情と、見事に照応して、見飽きることかない。そして右図が、「美人観蛙戯図」..これまたほどよく脱力した女性が眺めているのは、漫画の中でしかあり得ない「蛙の相撲大会」であるが、なんというか、「戯画」という感じがしない。実に自然なのである。(この女性と視線を合わせている(見つめ合っている)蛙も含めて。)いずれも、額装して壁を飾りたい作品。いずれの女性も、足元が僅かに覗いているだけの、健全で控えめなお色気がまた、実によろしい。[^.^]



 とにかく、「万能の天才」。そうとしか、呼びようがない。今回の展覧会で展示された作品群のうちでも、ごく一部のジャンルのごく一部の作品をご紹介できただけだが、暁斎の作品数たるや、実に厖大で、そのジャンルも手法も、多岐に渡っているのである。それが逆にわざわいして、比較的近年まで「忘れられていた」画家なのであるが..そうだな、誰にたとえようかな..現代漫画ジャンルだと、「多様性」と「(何を描いても超一流という)万能性」と「厖大な作品数」を掛け算すると、「手塚治虫」という答えしか出てこないが..これだと少しニュアンスが変わってしまう。暁斎には、新ジャンル(未踏の荒野)を切り開いていくブルドーザー、という印象が無いのである。むしろ、「石ノ森章太郎」か。(無論、石ノ森も、(手塚が手掛けなかった)多くの新ジャンルを開拓しているのだが。)

 調子にのって、日本のSF作家にもたとえてみよう。前記と同じ理由で、「小松左京」とは言えないのだ。

 ..つまり、小松左京とは別の意味での「万能の天才」、「筒井康隆」なのである。

 15:10に退出。忘れずに後期展示も観なくては。15:26に東京を発つこだまで、17:22、浜松着。小雨が降っていたのでタクシーを奢り、17:45、帰宅。

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*解説


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jul 11 2015
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