*2000年04月24日:サーカスの想い出
*2000年04月25日:こうも悪事を重ねると
*2000年04月26日:アンプ受け取りなど
*2000年04月27日:自戒ネタ
*2000年04月28日:植物的な蜘蛛の巣
*2000年04月29日:魔術的な帰省
*2000年04月30日:墓参り/「ムーン・プール」
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*2000年04月24日:サーカスの想い出


 サーカスを観たことが、一度だけある..と思う。あまりにも古い記憶なので、いまひとつ自信が持てないのだが..

 小学生になっていたと思う。近所の空き地?に設営されたテントだったろうか。日本のサーカス団だったことは(後述する)演目の特徴から間違いないが、団の名前は覚えていない。

 「音」の記憶が、全く無い。例の、特徴的なジンタ音楽を、全く覚えていないのだ。

 しかし、そのジンタ音楽の“哀感”を伴っていないながらも、私の記憶の中の、そのサーカスは、なんとも侘びしく、哀愁に満ちたものであった。

 まず、席などは無かった。茣蓙(ござ)である。石が当たって、お尻が痛かった。また、その地面は斜面であったと思う。出し物も、親の記憶によると、バイクがぶんぶん走り回るようなものがあったはずだ、と言うのだが、そういう派手な演技は、全然覚えていない。

 唯一、覚えているのは..ひとりが脚で障子を支え、その障子の裏側に、もうひとりが乗る。そして裏から、毛筆でサラサラと短歌(のようなもの)を書く。(つまり、鏡像文字で書いたわけである。)そして何故か、指でキツネの影絵をする。そして障子の陰から顔を覗かせると..キツネのお面をしている..というものである。

 こうして書いてみると、何やら意味不明の、難易度も高くない芸であるが..他の演目を全て忘れて、この、いかにもドメスティックな演技だけが、記憶に残っているのである。

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*2000年04月25日:こうも悪事を重ねると


 朝日新聞の社会面に、


「暴走族「やらせ報道か」 大阪府警 テレビ大阪社員聴取」

 ..という見出しをみて、「今度は大阪府警か。何をやらかしたんだ」と眉をひそめてしまった。ふつぅ、誰だって、そう思うよねー。[^.^]

 杉浦茂、死去。

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*2000年04月26日:アンプ受け取りなど


 代休取得。

 ワイシャツをクリーニング出ししてから銀行へ。この連休を乗り切るための軍資金の手当て、29日の東名バスのチケット、inetc会費振り込み、と済ませてから、ジョーシンで修理上がりのアンプを受け取る。8千円。どうやら、特段の事情が無い限り、メーカーを問わず、アンプの有償修理は8千円、と決まっているようだが、どういう計算になっているのかな。

 いったん帰宅してから、三方原の明屋書店で新幹線の回数券を購入し、その足でI市の某古書店へ。今日は買い物ではなく売り物。ダブってしまったSFの文庫本などだが、P.K.ディックなど、捌けると判断されたものは、100円で買ってもらえた。これは納得の行く値づけである。(むろん、引き取ってもらえなかったものもある。)

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*2000年04月27日:自戒ネタ


 情報が“ナマ”なまま“陳列”されているマンガを、たまに見かけることがある。

 作者もタイトルも忘れたが、随分昔に読んだパチンコ業界もの。パチンコ屋の若主人と、彼を補佐する番頭格の男。そして彼らの物語とは独立に進行する、バーコード禿げの(リストラされた?)中年男が、ヤクザ業界に転身する(というか、押し掛け見習いをする)物語。それなりに味があって悪くない漫画だったが、時々突然、変な“情報”が入るのである。例えば“パチンコ玉の直径と重さ”。それは物語の肉付けになっておらず、ただ単に、さしはさまれているに留まるので、妙な違和感が残ることになる。

 別の漫画家による、これは総会屋を取りあげた作品。これにも“面白い”情報が挿入されていた。とある総会屋が、主人公に向かって、「いいかい、総会屋ってのは、朝が早い商売なんだ。紙袋を持って、6時前に集金して回るんだ..」てなことを言うシーンがあり、これを読んだ私が、へえぇ、総務の総会屋担当ってのは、朝の6時前には、会社でスタンバっていなければならんのか..と、ひとつ賢く(?)なったのは確かだが、しかし、この会話は、前後の文脈とは全くなんの関係も無く、彼が何故こんなことを言ったのか、意味不明なのである。

 もう一例。これは漫画ではない。

 ニフのとある会議室で、シンセサイザー(というか電子楽器)は、まともな(シリアスな)楽器とは言えない、その証拠に、オーケストラに定着していないではないか、高々良くても代用品どまりだ、という主張をされている人がいた。他にも色々なことを述べていたのだが、正鵠を得ている点も(中には)無いでは無いし、電子楽器作りのプロが口を出すべき展開でもなかったので、一切反応せずに傍観していたのだが..そのうちに彼は、こんなことを言い出したのである。「(シンセサイザーではない)電子オルガンには、鋭いアタックが付きます。これをチフ音と言うのですが..」..それで?

 文脈から乖離しているのである。全く唐突に出てきた話題(主題)なのである。

 以上3例、共通して言えるのは、作者(話し手)が、“とにかく、知っている材料を、繰り出している”ことである。目的は、枚数かせぎと、ペダンティックな雰囲気の醸成。「へえぇ、そんなことまで知っているのか!」と、騙される読者もいるかも知れない。

 しかし要は、“ここまで”なのである。前後の文脈から乖離している(浮いている)のは、“つなぐ”ことが出来なかったからである。“つなぐ”部分の知識が無いのだ。その話題についての系統だった教養を、持ち合わせていないのである。

 上記の、3人目の例について言えば、「しかし今のデジタルシンセサイザーの音は、オーディオ的には特性はいいのでしょうが、どこかおかしいのではないでしょうか。アナログシンセサイザーの音の方が遙かに云々」という文章(文字列)は、切り貼りの元ネタまで指摘できるし、そのアナログシンセサイザーの例として、「ミニムーグやシステム700」という並べ方が完全におかしいのだが、しかしこれらは、「判る人にしか判らない」おかしな点である。それに対して、唐突に「チフ音」に言及するのは、電子楽器(あるいは楽器)のことを全く知らない人にでも判る、おかしな点である。

 ある論者が、まともな知識ベースを元に議論を展開しているか否かは、議論の流れを追えば素人にでも判る、という、好例であった。書斎派の陥りやすい罠である。あなたも自戒されたし。私も、これまで以上に気をつける。

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*2000年04月28日:植物的な蜘蛛の巣


 植物は、ほとんどのところ、死体である..と、聞いたことがある。根の先とてっぺんは生きていて、どんどん分裂しているが..植物の個体性とか、寿命は、よくわからない。幹の皮なんて、完全に死んでいる..

 WWWも、ほとんどのところ、死体である、と言えるのではないか。どんどん新しいウェブページが誕生するが、その大部分は1年と保たずにメンテが止まり、消去もされずに、サイバースペース(キャッ)の中に、死骸を晒し続ける..

 誤解しないでいただきたいのだが、それが悪いと言っているのではない。幹の皮は完全に死んでいるかも知れないが、我々はそれを愛でるのである。“死んだ”ページを愛でることも出来るし、役に立つこともあろう。

 しかし時には、明確に“邪魔”であり、消えて欲しいこともある。

 1994年のことであるが、私が自分のページを立ち上げる前に、とある大学生の方から、私の「新・ベルリオーズ入門講座」を、自分のページ(正確には、自分が管理する、大学のアーカイブページ)に転載してもよろしいか? という申し出を受け、快諾した。そしてその後、何年間か、そのことを忘れていた。思い出したのは、かの大学生が(多分)卒業してからだった。

 gooで“ベルリオーズ”を検索すると、検索リストの先頭に、かのアーカイブページに転載された「新・ベルリオーズ入門講座」が(「しん・ベルリオーズ入門講座」、と、微妙に名前を変えられていたと記憶するが)現れるのである。それはそれで嬉しいのだが、嬉しくないのは、その内容が(何しろ1994年時点の文章であるから)いささか古い、ということであった。(私が「倉田わたるのミクロコスモス」に「新・ベルリオーズ入門講座」を掲載した時点で、また、そのあともしばしば、手を入れているのである。)

 困ったのは、それが“古い”文書である、ということが、読む人には判らないことなのである。これは私の責任なのだが、(1994年時点の)「新・ベルリオーズ入門講座」の各ファイルには、作成・変更年月日を、書き込んでいなかったのだ。

 さらに困ったのは、この事態に対処してもらおうにも、当の大学生に連絡が取れなくなっていたことである。メールしても返事が来ない。彼のメールアドレスが大学で割り当てられたものであることは間違いなく、私が出したメールは、彼が卒業したので読まれることもなく、メールスプールに溜まっていったのであろう。(エラーにならなかったということは、まだアカウントは削除されていなかったということか。)「しん・ベルリオーズ入門講座」を、最新版の「新・ベルリオーズ入門講座」に置き換えてもらうか、望ましくは後者へのポインタに書き換えてもらいたいのだが、それを実行してくれる人がいない。このアーカイブページのトップには、管理者のアドレスが(彼を含めて)何人分か列挙されていたので、片端から直訴 [;^.^] メールを送ったのだが、やはり返事が来ない。(みな、卒業してしまったのであろう。)

 つまり、当時は(そして今も)私のページはgooで検索出来ないので、“倉田わたるがベルリオーズについて書いた文書”としては、「新・ベルリオーズ入門講座」よりも、古い「しん・ベルリオーズ入門講座」の方が、遙かにメジャーで検索しやすい、ということになってしまったのであった! 切歯扼腕、隔靴掻痒、言語道断、横断歩道!

 ..死体となった「古いページ」が、邪魔であるにも関わらず、消そうにも消せなくなった、という実例であった。(この大学のウェブページは、その後(確か去年になってからだったと思うが)ディレクトリ構成が変わったらしく、上記のアーカイブページには(削除されたのかどうかは判らないが)以前のURLではアクセス出来なくなり、結果、gooの検索リストには現れなくなった。一応、一件落着である。)

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*2000年04月29日:魔術的な帰省


 久しぶりに、東名バスで帰省する。

 始発の浜松で、既にほぼ満席である。私は窓際に陣取ったが、隣りに、ちょっと可愛いソバカスっ娘が乗ってきた。補助席も全部引き出され(すなわち、通路が完全に塞がり)、走行中の席の移動は、完全に不可能。ソバカスっ娘はコンパクトを出して顔をいじりはじめ、私は本も読まずに窓外の、まだ目が覚めきっていない8時過ぎの街の風景が後方に流れ行くのを、ほけら〜っと眺めやる..(これが、好きなのだ。)快晴である。

 30分ほどしてから、隣席の娘の方をちらと見て、仰天!

 ..に、人間入れ替えトリック!? 移動は不可能なのに!?

 ..いや、ネタは割れている。服装が同じだ..[;^.^]

 一人二役を演じるのはご自由だが..小綺麗ではあるが、そこら辺にいくらでも転がっている、無個性な“第二の顔”よりも、愛嬌のあるソバカス顔の方が、素敵だったと思うがね..

 まぁ、私の肩で居眠りしてくれたので、良しとする。

 霞ヶ関で降りて、中野まんだらけへ。聖レイ無し。4Fの(「大予言」じゃない方の)お気に入りの小さな古書店は、もはや店というより倉庫に近い。積み上げられた本の山から銀背を5冊選び取り、本の山の向こうにある(はずの)レジに差し出す。(ほとんど姿の見えない)店主が手を差し出して渡したお釣りを、やはり私が(本の山に身を乗り出して)手を伸ばして受け取る。その、ふたつの手が重なり合った、まさに真下に積み上げられている本の山のてっぺんに、銀背(金背)の「ムーン・プール」(A.メリット)。運命的に宿命的に私を待っていたのである。その場で保護。

 ブックスーパーいとう西荻窪店、神保町の各古書店、と回るが、どこにも聖レイは無い。神保町の、かつて聖レイを3冊買った店には、1冊、あるにはあったのだが、既に購入済みのタイトルであった。

 秋葉原でCDを購入してから、横浜の実家へ。

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*2000年04月30日:墓参り/「ムーン・プール」


 亡父の墓参り。

 横浜霊園前の崖一面に、見事な藤の花。これには驚いた。(剥落保護のために)コンクリでゴツゴツと固められた上に、ネットが被せられているだけの、実に無愛想でそっけない風景だったのだが、そのネットに、幅100メートル以上にわたって、藤が這わせられていたのである。その下に(帰路の)バス停があるのだが、藤の花の芳香に、噎せ返るほどだ。なかなか洒落たことをする。

 バスの中で、乗り込んできたおばあさんに席をゆずったら、座りながら「あなた、みのるさんですか?」、と訊かれた [;^J^]。

 どうも、そのおばあさんのお孫さんに、そっくりだったらしいのである。終点でバスから降りても、(改めて)呼び止められ、顔も、立ち居振る舞いも、服装も、良く似ているねぇ..懐かしいねぇ..と、目を細められたのだが..私は、懐かしくないんですが [;^J^]。(「鉄腕アトム」の「ロボット流しの巻」を想い出した、というのは、ここだけの話にしておこう。)

 帰宅してから早速、昨日購入した「ムーン・プール」を読む。期待どおりの傑作。

 棲息者(輝くもの)の、ビジュアルなイメージが素晴らしい。7つの光点を持つ霧のごとき生物だが、“生ける屍”の渦巻く群れを抱えて移動してくるシーンは、圧巻。月から(月の光の径を辿って)飛来するかのごとき、という趣向もいい。ただ、原文と翻訳、両方のせいだと思うが、情景描写が判りにくい(特に建造物の構造が、何度読んでも釈然としない)箇所が、少なくない。

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*解説


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: May 3 2000 
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