*1997年09月01日:ある論争
*1997年09月02日:「お気楽カルミナ」シンセの仕込み
*1997年09月03日:スポーツマンシップの謎
*1997年09月04日:39歳
*1997年09月05日:歯が擦り減っている..
*1997年09月06日:「お気楽カルミナ」練習会
*1997年09月07日:高橋葉介調査
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*1997年09月01日:ある論争


 ニフの、とあるフォーラムで、マックファンとPCファンとの、ちょっとした論争のようなものが、起っていた。いや、こういうとすぐに殺伐としたものを想像されるであろうが、コンピューター系のフォーラムではない、趣味のフォーラムの、いわゆる雑談部屋でのことであるし(つまり、当事者のマックファンにせよPCファンにせよ、命かかっている [;^J^] 状態ではない)、その他の面では気の合う仲間同士であるし、なんといっても、その小論争の参加者全員が紳士なので、あなたが期待したであろう [;^J^] 酷い状況にはならないのだ。

 このご時世であるから、そのマックファンの心理状態は微妙であり、多少とも屈折している。(もちろん、彼に限ったことではないのであろうが。)相手(複数)のPCファンにはそれが判るものだから、反論しながらも「いたわる」「庇う」姿勢が入り、しかしそれを相手のマックファンに察知されるのは却って失礼だという認識はあり、そして相手のマックファンには、PCファンのそういう心理状態はもちろん全て判るし、さらにそのこと自体もPCファンにも判っている..という、メタにメタを重ねる心理劇である。[;^J^]

 アップルの経営(姿勢)がおかしいことについては争わないが、少なくともここ日本の(ビジネス用途ではなく、一般コンシューマー向けの)市場では、マックの人気は高い、というのが、そのマックファンの主張である。ここまでは正しい。

 しかしこのあとの彼の論旨の展開が、少しおかしくなるのだ。

 日本で人気が高いことの証拠として、秋葉原の大手ショップのベストセラーリストの上位を、マックが独占していることをあげている。

 これこそが、マックの(アップルの)危機の本質なのである。

 いちいち試算はしてみせないが、そうでなくとも小さなパイの中で、特定の数機種しか売れていないことの証拠ではないか。アップルほどの巨大企業が、特定の数機種の売り上げに依存していることが、いかに危険な状態であることか。

 そのマックファンにも、そのことは内心判ってはいる。しかし無意識のうちに、事態の“良い”面(すなわち、綺羅星のごとく居並ぶPC諸機種を圧倒して、マックの、とある機種が一番売れている、という事象)のみを見ようとしているのだ。

 (まじめに数える気が到底起らないほど、ピンからキリまで膨大な種類の機種が存在するPC市場において、特定の機種が図抜けて売れる、ということは、ほぼ絶対にありえない。これが健全な市場の姿であり、コンシューマーにとって幸せな状態なのである。)

 人は誰でも、自分の耳に心地良いことしか聞かず、自分にとって心地良いように世界を(状況を)解釈する。そういうフィルタが自動的にかかる。その実例なのであった。別にこのマックファンに限ったことではない。

 今回の“小論争”では話題に登らなかったが、マイクロソフトのアップルへの資本参加について、いわゆる“マック・コミュニティー”では、この提携交渉は、アップルの“勝ち”である、という論調が支配的であるように見える。つまり、アップルのクイックタイムの技術をマイクロソフトが盗んでいることが立証出来たので、これをネタに、スティーブ・ジョブスがビル・ゲイツを恫喝して、口を出さずに金を出させることに成功したのだ、ということらしい。

 これが事実かどうかは、私は知らないが..これこそ事態を、自分の耳に心地良くアレンジして聞いていることの、良い実例である。もしもこれが事実ならば..アップルは、大切なクイックタイムの技術を、僅か1億5千万ドルで、マイクロソフトに掻っ攫われたことになる。

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*1997年09月02日:「お気楽カルミナ」シンセの仕込み


 「お気楽カルミナ」の練習会は、今週土曜日。おそらく今月中にもう一回、練習会をして、本会は来月18日である。その練習会(及び本会)に持ち込むためのシンセの仕込みを、いったん、仮フィックスする。

 カルミナ・ブラーナは大編成の作品であり、特に打楽器の種類が豊富である。それらのうち、ティンパニ、大太鼓などの大物は、会場その他から借りる算段がつくであろう。また、シンバル、小太鼓、カスタネット、トライアングル、スライヤ・ベル(橇の鈴)などの小物は、誰かが持参してこれる。そのどちらでもない、容易には調達も持参もしがたい楽器群、すなわち、グロッケン、シロフォン、チェレスタ、チューブラーベル、鐘、のパート(及び、その他、当日足りないパート)をシンセで鳴らすのが、私の使命である。

 これが結構、ややこしいのだ。

 25曲からなる組曲であるが、そのそれぞれで、使用される打楽器の組み合わせが異なる。私が担当するのは基本的に高音楽器なので、鍵盤の高音域側をアサインし、低音域側には、まんいち本物の低音打楽器が揃わない場合にカバーするために、低音打楽器群の音をセットしておく。実際には、個々の楽器の音域が重なっているので(例えばシロフォンとグロッケンとチェレスタ)、同時に全ての楽器を鍵盤上に展開することはできない。使われる打楽器の組み合わせに応じて、25曲分、鍵盤への楽器の割り付けを変えておく。そしてこの25曲は、切れ目無く演奏されるので、スイッチ一発で次々とそれらの設定が呼び出せるようにしておく。

 その他、鍵盤の割り付けに余裕がある曲では、同じ楽器の同じ音域を、わざと1乃至2オクターブずらして、2面、展開しておいたりする。こうすると、トレモロ奏法が楽になるのだ。(ひとつの鍵を、片手の人差し指と中指で交互に叩くのではなく、オクターブ離れたふたつの鍵を、両手の中指で交互に叩けば良いので。)ズルと言えばズルだが、本来はマレットでシロフォンなりグロッケンなりを叩く箇所である。どうこう言われる筋合いはないっ [;^J^]

 楽器間の音量バランスが難しいが、これはヘッドフォンで聴いていても完全には追い込めない。自宅のスピーカーで聴くバランスと、練習会(及び本会)会場での鳴りのバランスも、全然違う。現場で合わせ込むしかないのだ。

 また、25曲全体を通しての基本設定として、低域2オクターブには、非常用の低音打楽器群(大太鼓、小太鼓、タムタム、シンバル、ティンパニ)をセットしておくわけだが、スイッチ一発(厳密には数発)でそれらのパートを殺して、この音域を手早く、別の楽器にさしかえられるようにしておく。これは当日の急なリクエストに応えるためである。この代替パートのデフォルトの音色として、コントラバスを仕込んでおく。

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*1997年09月03日:スポーツマンシップの謎


 確か先週、日本とオーストラリアの大学野球の対戦があり、そこでちょっとした事件が起きた。ゲームは日本の圧勝だったのだが、後半、10点差をつけた日本の攻撃で盗塁を試みたら、オーストラリアの監督が(選手たちも?)怒ったのである。

 「そうまでして点を取りたいのか(もう勝負は決まっているのに)」「侮辱ではないか」、ということらしい。

 新聞のスポーツ面で読んだだけなので、細かいニュアンスまでは解らないのだが、これには驚いた。さらに驚くべきことには、同じ状況がアメリカ国内で起きたら、米国人も怒るだろう、とコメントされていたことだ。

 どうしろ、と言うのだろうか? 大差をつけたら、あとは無難に試合を運んで終わらせろ、とでも言うのだろうか? 盗塁などという、得点するためのせこくて確実な手段に走らず、打者はみんな、ホームラン狙いで大振りしろ、とでも言うのだろうか? 手を抜くのが圧勝者の礼儀なのだと、言いたいのだろうか?

 手を抜く方が、よほど侮辱的な試合態度ではないか。

 「獅子は兎を倒す時にも全力を尽くす」という諺は、もしかして日本オリジナルだったのか?

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*1997年09月04日:39歳


 誕生日である。39歳である。78歳まで生きられるとは思えないので、まぁ既に後半生なのだろうな。これといって、感慨も無いが..

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*1997年09月05日:歯が擦り減っている..


 明日のカルミナの練習会のために、さらに仕込む。

 カリヨン(鐘)のウェーブが、倍音が多すぎて音程感が希薄で少々難ありなのだが、これに代わるウェーブが持ち駒に無いので、基音をサイン波で補強して音程感を整える。また、(極めて重要なパートである)グロッケンの音色が、どうにも痩せているので、素材のウェーブをビブラフォンに差し替えて、これをグロッケン風に整える、等など。

 歯医者では、歯ぎしり、食いしばりの形跡があり、これが歯に対して良くない効果を及ぼしている(要は、擦り減っている)と、指摘される。何か(肉体的、あるいは精神的に)力んだ時に歯を食いしばっていることは、しばしば実感しているが、歯ぎしりについては、やり方すら解らない。

 医者が、上の歯の擦り減り方と下の歯の擦り減り方を組み合わせて、ピタリと嵌まることを見せてくれたので、なるほど動かぬ証拠かとも思うが、これは大西洋を挟むユーラフリカ大陸と南北アメリカ大陸状態なのですね、と、思ったが言わない。[;^J^]

 明日の上京は、高橋葉介調査も兼ねている。高橋葉介MLで、しっかりした作品リストが立ち上がりつつあるのである。リスト系オタクとして、協力しないわけには(当然)いかず、初出誌照合チェック用原簿を作成する。要調査項目は、400件弱。(単行本未収録作品発掘工数は除く。)手塚治虫に比べると桁外れに少なく、吾妻ひでおと比べても、5分の1位である。国会図書館に収められていると期待できる初出誌が多く、経費面ではここで調べる方が有利なのだが、国会図書館は、手塚治虫調査の追い込みで、今暫くはこれに専念したい。一方、現代マンガ図書館は、手塚治虫と吾妻ひでおの調査に関しては、やるだけやりつくしてしまった観があったところで、ここに高橋葉介調査を押し込むのは、筋が通っている。

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*1997年09月06日:「お気楽カルミナ」練習会


 というわけで、カルミナ練習会&高橋葉介調査のための上京である。雲が広がっており、さほど汗をかかずにすみそうだ。今日明日と国会図書館は閉まっており、現代マンガ図書館の開館は12時なので、早い時刻に東京に着いても仕方がない。こういう時は、廉価な東名バスと決めているのだが、今日はシンセも担いで行くのであり、東名バスは霞ヶ関で降りてから、地下鉄有楽町線のホームまで(地下を)歩く距離が長く、あんばいが悪い。結局、10時2分のひかりにする。

 しかし..この荷物の重さは、夏オフの時より酷いぞ。[;^J^] 小型スピーカーに加えて、高橋葉介の単行本13冊をリュックサックに入れているからである。照合調査用なのだから、仕方がないとは言え..

 ..しかし、どこか間抜けなのである。一昨日、現代マンガ図書館に、高橋葉介作品集(朝日ソノラマ刊、全20巻)は揃っているかどうか、電話で確認しているのである。その時、その他の単行本の蔵書状況も確認するべきだったのだ。(言うまでもなく、蔵書されているのなら、その場で借り出して初出誌と照合すればよい。1冊100円の借り出しコストなど、運搬労賃に比べればタダ同然である。)それを忘れたものだから、実は蔵書があるかも知れない(いや、80%以上の確率で、蔵書されているであろう)単行本を、万が一にも蔵書されていないと困るので、わざわざ担いでいくハメになっているのだ。(さらに言うと、このことに気が付いたのは昨日(金曜日)であり、火曜と金曜は現代マンガ図書館は休館だったのである。間抜けの上塗り。)

 それにしても、私のリュックは、やや小振りな普通サイズで、大荷物のパッキングに毎度手間取る。ほとんど最密充填状態である。もっとも、だからこそ荷物の量が自ずから抑えられている、とは言える..

 ..ゲロゲロ(死語)。東京駅に着いてみれば、銀の鈴待合所の大型コインロッカーが満杯である。つまり、シンセを担いでの今後の移動という重労働と引き換えに、600円の使用料を稼ぎ出したわけだ(前向きっ)(トホホ ← 死語)。

 12時過ぎに現代マンガ図書館に入り、「少年チャンピオン」誌を130冊チェックし、「学校怪談」全エピソードをオールクリア。ここで16時を10分ほど回るという、ちょうど予定どおりのタイムスケジュール。

 池袋、西日暮里経由で千駄木へ、ここのTホールでお気楽カルミナ。オーケストラは、管楽器が各パート一人か二人、弦楽器も多くはなかったが、合唱が多く、また、重要なピアノパートも打楽器奏者もいて、本来の編成に比べたら室内楽とまでは言わないまでも、せいぜい室内オーケストラ程度の編成ではあったのだが、しっかり、音楽として成立した。実は、こういうスリルも、お気楽オフの楽しみのひとつなのである。

 シンセによる(鍵盤)打楽器群のパートの演奏は、まずまずうまくいった。そもそも、わざわざ練習会にシンセを持ち込んだのは、曲ごとに設定を切り替えつつ演奏する、というプランに無理はないか、このクラスのスピーカーでも通用するか、などなどの実験を、本会以前にやっておきたかったからである。それらの疑問はクリアした。課題も明らかになった。(その最たるものは、音量バランスの事前(及び演奏中の)調整である。)また、指揮者からは、本会では一部のストリングスパートにシンセを被せて厚みを出したい、という宿題ももらった。楽しみなことである。

 21時近くに練習会が終わったあと、同じく静岡から上京して参加したR氏と、いったん日暮里駅前のTホテルにチェックインしてから千駄木に戻り、21時過ぎから始まっていた反省会という名の宴会に、50分ほど遅れて参加。宴会は23時過ぎにお開きとなり、0時頃にホテルへ。

 そこで待っていたニュースは..マザー・テレサの死と、大指揮者、サー・ゲオルグ・ショルティの死。

 ダイアナもマザー・テレサも、私にとっては全くどうでもいい。ショルティが死んだのには、まいった。享年84歳。

 なにも100歳まで現役で振り続けるだろうと(本気で)期待していたわけではなかったが..しかし、あと10年は..彼ほど“死”と縁遠く見える人はいなかったのに..

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*1997年09月07日:高橋葉介調査


 まだ早い時刻に、ひと足先に静岡に帰る同室のR氏を見送り、昨日の高橋葉介調査の調査結果の整理、ニフとインターネットの巡回&メール読みなどしてから、ホテルを発つ。

 まず、東京駅の銀の鈴待合所へ。大荷物をふたつ、シンセとリュックを大型のコインロッカーに入れ、必要最小限の手荷物(照合用の高橋葉介の単行本と、調査ファイル)だけにして、身軽になって、渋谷は東急ハンズへ。組み立て式の書棚を見繕う。

 来年度には、自宅のすぐそばを、大きな道路が開通しそうな気配があり、そうなると引越しの潮時か、という気もしている。(たいして便利にならないのに、うるさくなるだけだからだ。)でも、思っているだけであって、具体的なプランは何もなく、従って、新しい部屋に合わせて家具を買うなどは、思いもよらない。まぁ、今の狭い部屋のキャパを前提として、せいぜいデッドスペースを有効利用できないか、という程度の、なんとも覇気の無い購買態度である。

 結局購入には至らなかったが、ちょっと具合の良さそうな品を見つけたので、パンフをゲットする。自宅に帰ってから、置き場所の寸法をチェックして、場合によっては電話注文だ。

 スパゲッティを食べてから、現代マンガ図書館へ。12時の開館直後に入って、19時の閉館まで連続7時間、初出誌(「リュウ」「少年キャプテン」「マンガ少年」「季刊コミックアゲイン」「コミック読本・SF大特集」「ハロウィン夏の増刊号」「月刊ギャグダ」「少年KING増刊エイリアン」「少年ビッグコミック増刊」「漫金超」)を総計115冊と、単行本9冊を借り出し、休みなしに高橋葉介の調査。昨日分と合わせて、これで既に、全初出誌(判明している分)の過半数に目を通したことになる。

 20時21分のこだまで浜松に帰る。

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*解説


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Sep 9 1997 
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