鉄腕アトム(小学一年生版)

 「鉄腕アトム」の系列を、ざっと整理してみると、まず、「アトム大使」が 51/04 から 52/03 まで。引き続き「気体人間の巻」が 52/04 から始まり、68/03 に最後のエピソード「火星から帰ってきた男」をもって、雑誌の廃刊と共に連載終了。これが「少年」版。

 この間に、63/01/01 から 66/12/31 まで、テレビアニメ。そしてこの最終回を受けて、サンケイ新聞で 67/01/24 から 69/02/28 まで連載(のちに「アトム今昔物語」と改題)。すなわち、サンケイ新聞版は、少年版が終わる1年以上も前にスタートし、少年版終了の1年後に終わっているのである。

 3年ほど間をおいて、72/04 から 73/03 まで、小学四年生と小学一年生で並行して連載。内容は、もちろん全く異なる。小学四年生版は、サンケイ新聞版どうよう、アニメの最終回の後日譚として、熔けたアトムが金属板に貼りついて宇宙空間を漂流しているところから、スタートする。小学一年生版は、小学四年生版の枠組(時間旅行)と、一部の設定(アトムは空(宇宙)からやってきた)と、小道具(額のタイムマシン)と、登場人物(スピカ)を借りて、幼年向きにかみ砕いたものである。

 さらに数年後の小学二年生版(80/09 から 81/12)になると、テレビアニメの設定とも、全く関係が無くなる。最晩年の「アトムキャット」(86/07 から 87/02)は、アトムの作品世界を借景とした、メタな作品である。


 突然、大きな氷塊が、空からサブキャラ兄妹の家に落下して、壊してしまう。中に閉じ込められていた、額にダイヤルのついたアトムは、そのショックで目を覚ます。お詫びに家を建て直して、お城にしてしまう。(72/04 号)

 アトムの七つの威力。音より速く飛び、百万馬力、耳が1000倍、お尻からマシンガン、空気から飲み物を作り、目がカメラ、そして、額のダイヤルがタイムマシン。アトムは、兄妹を喜ばせるために、タイムマシンを使って密かに恐竜を連れてきて、元の時代に送り帰すが、足跡を消しておくのを忘れ、町は大騒ぎになる。(72/05 号)

 アトムの昔話。むかし、とびお少年が交通事故で死んだ。僕はその生まれ変わり。だから、交通事故が憎い。交通事故を解消するために、未来から、風船装置を持ってくる。この丈夫な風船に包まれていると、車がぶつかっても平気なのだ。しかし子どもたち一人ひとりをこれで包んでしまうと、安全ではあるが、友だちといっしょに遊べない。そこで、子どものかわりに、自動車たちを風船で包んでしまう。子どもたちはふわふわ宙を浮く自動車たちの下で、のびのびと走り回って遊ぶ。(72/06 号)

 アトムはタイムマシンで、未来へお散歩に行く。地ならしロボットの暴走を退治して、ロボットにつぶされた靴を、兄妹への、お土産に。(72/07 号)

 地球が汚れているので、宇宙からハエの怪獣がやってきた。アトムは蜜を体に塗って、ハエたちをおびき寄せ、火山の火口にの中に捨てる。アトムにはハエの臭いが移り、地球のハエたちが、仲間だと思って集まってくる。(72/08 号)

 ロケットを襲う8本脚のベム。アトムがベムにわけを聞くと、ベムの子どもがさらわれたとか。ロケットの中には、フーラー博士。丸い卵を山ほど盗んでいた。アトムのロケット噴射で、卵が孵った。タコである。子どものタコたちは、元気に、お母さんタコと帰って行く..(72/09 号)

 荷役ロボット。無骨で醜いのを悲しみ、お茶の水博士に、スマートな体型に改造してもらうが、仕事にならず、もっと頑丈な体に改造してもらう。(72/10 号)

 ロボットの女の子が倒れている。アトムはエネルギーをわけてやる。目覚めたその子は、宇宙人のロボット、スピカ。アトムを壊しに来たのだ。ゴンゴロというロボットを呼び出して、アトムを襲わせるが、アトムの危機に、思わずゴンゴロを壊してしまう。

「へんだなぁ、きみはだれのみかただ」
「あら。いやだーー。 いいや。そのうち やっつけるから……」

と、アトムにベタベタくっついて離れない。(72/11 号)

 「迷子なの…」と困っている、大きなロボット。アトムは、ジェット噴射で空に迷子の看板を出す。小さい子がやってくる。迷子が見つかって良かったね..と思ったら、この小さい子が親だった。(72/12 号)

 雪の降らない東京の子どもたちのために、雪国から雪を運んできたアトム。天気予報が狂うから降らせてはいかん、と、叱られて、東京タワーに巨大な雪団子を刺す。(73/01 号)

 見物疲れのストレスがたまっているパンダ。アトムはお茶の水博士に、わけのわからん動物型のロボットを作ってもらい、動物園の檻に入れてもらうが、ロボットを観ても面白くないので、お客はやはり、パンダの檻に集まる。そこでアトムは、パンダに“ばね”をくっつけて、ロボットに化けさせる。子どもたちは、ロボットじゃあ仕方がない、と、檻から離れ、パンダはゆっくり骨休み。(73/02 号)

 モノにぶつかって壊すのが趣味な、陽気なロボット。生まれた日に電車とトラックの衝突事故を目撃してしまい、それがカッコよかったからである。そこでアトムは、ぶつかりたければぼくにぶつかれ、と、挑発し、相手のロボットは、もちろんアトムに激突して壊れてしまう。アトムは彼を、お茶の水博士に直してもらう。博士は、ぶつかり癖だけは直せないから、と、ボーリングの球に改造してしまう。(73/03 号)


 特に可も無く不可も無い連載。タイムマシンの軽い扱いは、幼年誌ならでは。それにしても、せっかく登場したスピカの伏線は、どうした![;^.^]


(文中、引用は、小学一年生 1972年11月号より)


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jun 3 1998 
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