医師連盟理事長選挙である。お定まりの買収抱き込み合戦だ。軍資金が枯渇した天馬博士は、ブラック・ジャックから５千万円を借りてばらまき、選挙戦を有利に展開する。一方、対立候補は、天馬博士と“無免許の偽医者”ブラック・ジャックの結びつきを嗅ぎつけ、このスキャンダルを突いて来る。
この泥試合のさなか、天馬博士の娘のカスミは、飛び降り自殺を図る。ブラック・ジャックでなければ、カスミを救うことは出来ない。しかし投票日を目前とした、この時期に、ブラック・ジャックを呼んで、スキャンダルに裏付けを与えることが出来ようか？
天馬博士は悩んだ末に、ブラック・ジャックを呼び、手術をさせる。それを目撃した医局員たちの口から、噂はあっという間に広がり、翌日の選挙で天馬博士は惨敗する。しかし彼に悔いはない。医師連盟理事長の椅子よりも、遥かに貴重なものを失わずにすんだのだから。
読後感は爽やかである。これが単行本に収録されないのは、単にページ数の問題であろう。
倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jul 25 1996
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