*2018年06月04日:「バットランド」
*2018年06月05日:芸術学勉強会
*2018年06月06日:幻想美術選「最も静かなる時」北脇昇
*2018年06月07日:「ジャック・グラス伝」
*2018年06月08日:レーザー治療は先送り
*2018年06月09日:フラワーパークで花菖蒲と琴
*2018年06月10日:花菖蒲リベンジ
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*2018年06月04日:「バットランド」


 バットランド」(山田正紀、河出書房新社)、読了。絶対のお薦め!

 2007年から2012年にかけて発表された中短編、5編。「コンセスター」(佳作)のみ初見で、他の4編は、各種アンソロジーで既読であった。初読時の感想をDBから抜き書きすると..

 「バットランド」−認知症の老詐欺師、二進数コードを発しながら洞窟の中を飛ぶコウモリの群れ、蒸発するブラックホール、量子のもつれ、インド神話の神々、などのモチーフをおおらかにまとめる古き良き気宇壮大なSF。「解明のしようがない」「わからない」のオンパレードで、細かい辻褄合わせや理屈付けに囚われていないところが良い。「情報保存の法則」の破綻による宇宙の消滅の危機とコウモリの群れを結びつけるヴィジョンの壮大さと面白さで押し通している。

 「別の世界は可能かもしれない」−こういう、派手で胡乱な作品を書かせると、山田正紀は本当に生き生きとしている。

 「お悔やみなされますな晴姫様、と竹拓衆は云った」−「大いなる正午」(荒巻義雄)を想起させるところもある、壮麗な時空SF。輝夜姫つき。[^.^]

 「雲のなかの悪魔」−作者、暴走? [;^.^] もう、やりたい放題である。クオリアが決め手になることにはついていけたが、それにしても「愛」って..[;^.^]。純粋クオリアとしての祈り。大統一理論知性体/重力知性体/電磁力知性体。愛情不変の法則−二者の愛情が公差衝突したときその愛情は二者の愛情総和に匹敵する。(愛したぶんだけ愛される、愛されたぶんだけ愛する、愛情量は等しく同量でなければならない」……)「なに、これ? これのどこが物理法則なの?」..と、ヒロインも突っ込んでおります。[;^.^]

 上記「バットランド」の感想でも書いているが、現代SF的な(緻密な)理論武装は(気持ちよく [;^.^])省略して、話をバンバン先に進めてしまう、スピード感/ドライブ感が、最高である! ..たとえば、「これもまた量子もつれと関係したことなのかどうか、それもまた解明しようのないことだった」(「バットランド」122頁)、「量子もつれを介して地球とブラックホールの双方に存在する彼らにとってすでに常識的な物理法則は存在していないに等しかった」(「バットランド」132頁)、「が、何をどう考えたところで、推測の範囲を出ないし、しょせんは疑似科学の域にとどまるものでしかない」(「別の世界は可能かもしれない」176頁)、「すべては人間の理解の外にある。/想像することすらできない」(「雲のなかの悪魔」264頁)..いいでしょ、いいでしょ。[^.^][^.^][^.^]

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*2018年06月05日:芸術学勉強会


 残業せずに帰宅。徒歩で鴨江珈琲へ。40分ほど歩いて、19:00少し前に着いた。元同僚の店だが、来るのは初めて。月いちで「芸術学勉強会」という催しが開催されているけど、来ませんか、と、誘われたという次第である。

 参加者(常連)が揃うのを待って、始まったのは19:00を少し回ってから。主催のSさん、初参加の私を含めて、全部で6人という、ごくインティメートな勉強会である。今月のテキストは、「複製技術時代の芸術」(ヴァルター・ベンヤミン、晶文社)。参加者はみなテキスト持参で予習されていたが、私は、お誘いを受けてからアクションを取っておらず、手ぶらで来たので(ついでに未読 [;_ _])Sさんの本をのぞきこませていただきました。m[_ _]m

 まず、「輪読」自体が久しぶりで、面白かった。ひとりで読んでいる場合は、自分のペースで(1秒で3行片づけたり、逆に1行に3分間引っかかったりしながら)消化すればいいのだが、初見のテキストに他人の音読ペースでついていくときには、かなり集中しなければならないのが、新鮮。もちろん、テキストの内容は問題なく面白い..いや、問題はいくつか感じたのだが [;^J^]、それは時代や前提条件の違いから来るものであるし、そこの意見の出し合いが、勉強会(読書会)の面白さである。ひとりで読んでいるときには、こうはいかない。(何度も長々と脱線したうちの38%ぐらいは、私のせいではないかという自覚もあります。[;_ _][;^J^])

 来月も参加できるといいのだが、仕事の都合は合うだろうか。(残業さえしなければ、間に合うのだが。)参加できるとして、次回のテキストはバタイユになりそうである。

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*2018年06月06日:幻想美術選「最も静かなる時」北脇昇


 「幻想美術選」、第118回。日本人画家は何度かとりあげているが、シュルレアリストは、初めてである。

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「最も静かなる時」(北脇昇、1937年)

 北脇昇(1901〜1951、Wikipedia)のシュルレアリスム絵画としては、「空港」画像検索結果)、「眠れぬ夜のために」画像検索結果)などが有名であるが、個人的には、この「最も静かなる時」を、特に愛好している。

 いずれも、シュルレアリスムの代表的な技法(というか“着眼点”)である“ダブルイメージ”を中心にすえた作品であるが、ダリの“偏執狂的・批判的方法”とは、はっきりと異なる。ダリは、自らの“内なる幻想”を“自然(などの対象物)”に“照射”しているところがあるのだが、北脇昇は、“自然”から読みとっている..いや、“自然”というよりは、“自然に由来するオブジェ”を、別のものに“見立てている”のである。

 特にわかりやすいのが「空港」である。楓の種子が飛行機に、枯れたヒマワリの花が管制塔に、朽ち木とその節穴が雲と月に、見立てられている。あるいは日本的な発想と言ってもよいだろうか。この「最も静かなる時」においては、奇妙な形をした木の枝を、遠吠えする犬の姿に見立てているのである。(一瞬、万歳しているケンタウロスにも見えてしまったりするが。[;^J^])

 この、不思議な「霧」も、素敵である。北脇昇のこの時期の作品にしばしばみられるもので、瀧口修造は、「夢の映像を浮びあがらす意識下の濃霧」と評している。「霧」の印象的な用例は、幻想絵画に限らず、一般の絵画でも指を屈せば何本あっても足りないのだが(この「幻想美術選」にも数多くある)、ここでは文学からふたつ、挙げておこう。「死霊」(埴谷雄高)と、「霧越邸殺人事件」(綾辻行人)である。

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*2018年06月07日:「ジャック・グラス伝」


 しばらく前に読了していたのだった。ジャック・グラス伝 宇宙的殺人者」(Adam Roberts、内田昌之訳、早川書房、新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 べらぼうに面白い!! ウラノフ家を頂点とする(盤石ではない、叛逆の火種がそこここにある)専制下の太陽系。地上に降りない(しばしば脚など不要とばかりに切断してしまう)厖大な人口の貧民たち..

 どちらかと言えば「ミステリ(というより「探偵小説」)」なのだが、「不可能」がひとつのキーワード。いくつかの「不可能犯罪」と、「超光速」という「科学的に不可能」な発明。その、「科学的に不可能」な超光速を、「物理学の法則を守ったまま実現する」ロジックのトリックが不可能犯罪を解き、かつ、恐るべきSF的(科学的)ヴィジョンを導出する。

 連続殺人者たる主人公は、メンタリティ(及び能力)的には、アルセーヌ・ルパン型。ヒロインとの関係はむしろオールドファッションで、物語を引き締めている。

 超お薦め!!

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*2018年06月08日:レーザー治療は先送り


 今日は有休取得済み。海谷眼科での診察(経過観察)である。

 8:30から予約していたのだが、少し早めについて、待ちながら読書。検査では、専門病院ならではの(初めて見る)測定機などいろいろ動員されて面白いのだが [;^J^]、視野欠損の検査(視野の外側からちろちろと近づいてくる光点(など)が見えたらスイッチを押す)は、かなり、疲れた..[;_ _]

 ほぼ午前中いっぱいかかった。網膜の一部が剥離しかかっているというほどではないにせよ剥離する可能性がある状態である、とのことでの再検査だったのだが、今日の時点では、今すぐレーザーで施術するほどの段階ではない、ということで、再び経過観察となった。(いかに「こなれている」手術とはいえ、レーザー治療にも、リスクは当然ありますからね..)次回の診察は、11月である。

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*2018年06月09日:フラワーパークで花菖蒲と琴


 薄曇り気味の晴天。出発が少し遅れ、郵便局によってからフラワーパークに着いたのは、開園30分後の9:00であった。(別にこれでも、十分早い。[;^J^])

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 どの花でも同じことだと思うが、紫陽花は奥が深い..とりあえずの形には簡単にまとまる(ハードルが低い)だけに、ガラスの天井が..[;_ _][;^.^]



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 「水鳥の池」の周囲にて。魚眼の写真は、ホワイトバランスを少しいじって青に寄せている。



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 花菖蒲園に来たら、琴演奏のイベント(生田流箏曲琴陽会による生演奏)が始まるところだった。左写真は設営風景。中央写真では(DCレンズでソフトフォーカスして)妖精に見立てて。(妖精の顔にモザイクしますか? [;^.^])右写真は、その舞台を少しなめて、右側に広がる花菖蒲。



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 花菖蒲も、難しいなぁ..これでも、去年よりはマシになっているんですけどね..[;_ _]



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*2018年06月10日:花菖蒲リベンジ


 昨日の花菖蒲の写真に、モヤッと感が残ったので、フラワーパークにリベンジしにきた。

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 昨日よりは、よいと思う。今の私の技量では、このあたりが限界か..



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 通りすがりに、急いで撮った。落ち着いてボケコントロールすればよかったのだが..このあたりの瞬発力というか対応力も、これからの課題。



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*解説


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jun 15 2018
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