*2005年12月12日:あるサンプルデータの想い出
*2005年12月13日:寒波きたる
*2005年12月14日:寒い夜..
*2005年12月15日:「鴛鴦歌合戦」
*2005年12月16日:「失踪日記」、再び受賞
*2005年12月17日:いつか破滅の日が
*2005年12月18日:迫りくる恐怖
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*2005年12月12日:あるサンプルデータの想い出


 電子楽器メーカーのコールセンターでメールによる問い合わせの対応をしているのだが、お客様から「サンプルデータ」が送られてくることが、しばしばある。「御社のレコーダーで録音したところ、原因不明のノイズが混入してしまいました。15秒目付近です。聞いてみて下さい」、とか、「第5トラックのデータだけが、途中から2小節ずれるんです。なんとかなりませんか」、とか。

 サンプルデータといっても色々で、一聴して明らかに症状が確認できるものもあれば、なかにはどこがおかしいのか判らず、何十回も聴き返さなければならないものもある。送られてくるデータの音楽的クオリティもまたさまざまで、最後まで聴きとおすのにかなりの忍耐力が要求されるものもあれば、(業務を離れて)何度も聴き返したくなるような水準のものもある。

 まぁなんにせよ、ほとんどのサンプルデータは途中でテンポも拍子も変わらないポップス系なので、「途中からとにかくおかしくなるんです..」という類の非常に情報量が乏しい曖昧な訴えであっても、そのデータを聴けば、どこが(どこから)どのように「おかしく」なったのかは、判別がつく。

 以下、昔話である。約15年(あるいはそれ以上)時計の針を巻き戻す。

 当時の私は開発部署に所属しており、自動演奏装置の開発にたずさわっていた。当時「コールセンター」があったかどうか思い出せないが、あったとしても今とは比較にならないほど小規模な部門だったはずであり、そのせいか、お客様からの問い合わせが、結構ダイレクトに開発部署に届いていた。(開発部署に直接電話をしてきていたというのではなく、それらを受け付ける窓口の部門から(人手不足故に?)右から左へと、ダイレクトに調査依頼がやってきた、という意味である。)

 さまざまな「おかしくなってしまった」サンプルデータが送られてきた。自動演奏装置のサンプルデータだから、いわゆる「曲データ」なのだが、「途中からリズムが狂う」とか「突然、テンポが遅くなる」とか「ピッチが変になる」、とか。当時も今と同様、ほとんどの曲データはポップス系なので、どこがどのように変だとおっしゃっているのかは、見当が付くことが多かったのだが..一度だけ、強敵の襲来に見舞われたことがある。

 ノーリズム、ノーメロディー、ノーハーモニー。部分的にトーン・クラスター的な響きも聴かれるが、そのかなり長い曲のほとんどの個所においては、時々、どれかの楽器が取り留めもなく脈絡もなく音を発しているだけなのである。強いて印象を述べれば、ウェーベルンの後期の作品に近い..つまり、現代音楽系のユーザーなのであった。[;^J^]

 これには困った。何しろ、「どこがどのようにおかしい」のか、判別できないのである。「途中からデータが壊れていまいました」とのことなのだが..最初から最後まで壊れているようにしか聴こえないし [;^.^]..「何分何秒目付近から壊れているんでしょうか?」、と聞き返したりすると、気分を害するだろうし..[;_ _][;^J^]

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*2005年12月13日:寒波きたる


 浜松にいると今ひとつ実感できないのだが、全国的に寒い日々が続いている。そしてこの温暖で雪が降らないな浜松も、今朝あたりからついに本格的に寒くなってきた。昨日までは、ランニングとワイシャツの上にいきなりジャンパーを着て出勤していたのだが、(車通勤だし、会社で制服に着替える時の手間を省くためである、)さすがにもうダメ。ワイシャツの上にジャケットを着て、それからジャンパー。

 夜、無茶苦茶寒くなってきた。

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*2005年12月14日:寒い夜..


 今朝も寒い。これからずーっと寒いんだろうなぁ。

 帰宅時、富塚町のヴィレッジ・ヴァンガードに寄ってみたら..潰れていた [/_;]。COXのフロアの一角に間借りしている形だったのだが、全フロアCOXになっていた [/_;]。いつ閉店したんだろう? つい先日の日記に、「これで、自宅直近の散歩圏内に BOOK OFF、ヴィレッジヴァンガード、ツタヤ、と、かなり毛色の異なる「書店」が3店舗。悪くない」、と書いたばかりだったのに..

 夜の冷え込みが、いっそう、身にこたえるよぅ..

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*2005年12月15日:「鴛鴦歌合戦」


 ジョーシンに注文していた「鴛鴦歌合戦」(日活株式会社、DVN-1008-1)のDVDを引き取りに行く。帰りの足で、修理上がりの靴を受け取りに行ったら..もう11時を5分過ぎているというのに店が開いていない。鍵がかかっている。11時開店の筈である。店の看板を良く見てみたら、比較的最近になって、開店時刻を10時から11時に繰り下げたようだが..つまり、早起きが出来なくなってきているというわけかい。[;^.^]凸

 仕方が無いので、いったん帰宅。昼食はインスタント・ラーメン(たまにはよろし)。早速、「鴛鴦歌合戦」を再生する。

 おおおーーっ! これは聞きしにまさる素晴らしさ! 1939年に公開されたマキノ正博監督による「和製オペレッタ映画 第1号」。もうとにかく、最初から最後まで歌いまくりの踊りまくりである。これほど徹底的な音楽映画だとは思っていなかった。(挿入歌/挿入曲のみのインデックスもあるのだが、そのインデックス番号が35もある。)キャストは片岡千恵蔵、市川春代、志村喬、香川良介、遠山満、尾上華丈、深水藤子、ディック・ミネ、服部富子ら。

 絵傘作りの浪人にして骨董品コレクター(志村喬)の、コレクターとしての喜びと悲哀が情感豊かに描かれているところが、オタクの視点から観てもまことにポイントが高いし [;^.^]、彼の娘のお春(市川春代)の愛らしさといじらしさに、もう、イチコロで胸キュン(← 死語×2)である。彼女の歌は決してうまくはないんだが、なんとも素敵で味がある。志村喬の歌も同様。この2人の歌は、いわば素人芸だが、これらとプロの歌手陣の安定した歌唱とが組み合わされ、絶妙なオペレッタ世界を形作っている。超お薦め。

 夜、改めて修理上がりの靴を引き取りに行く。

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*2005年12月16日:「失踪日記」、再び受賞


 おっと、こんな情報が。「吾妻ひでお氏「失踪日記」など大賞 文化庁メディア芸術祭


文化庁は16日、創造性豊かな映像作品などを表彰する2005年度のメディア芸術祭の大賞に、アルコール依存症やホームレスの体験記をつづった吾妻(あづま)ひでお氏制作の「失踪日記」をはじめ、4作品を選んだ。審査委員会は失踪日記について、「自分の感情を排し厳しい状況をギャグに仕立てている」と評価した。

 うーむ、御上が..[;^J^][;^J^][;^.^]

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*2005年12月17日:いつか破滅の日が


 本棚に入りきらずに床に平積みしている本の分量を概算してみたら、これらを収めるためには小型の本棚がもう1本必要だということがわかってしまった。知らなくてもいいことを知ってしまった。[;_ _][;^.^]

 まぁ、この狭いアパートの中にも、不活用空間はまだまだ残されているので、そこに上手に詰め込んでいけばもうしばらくは「もつ」と思うのだが..しかしもう完全に、「負け戦」モードである。「退却戦」モードなのである。もう一部屋多いアパートを探す方が手っ取り早いのだが..引越する気力なんて..[;_ _][;_ _][;_ _]

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*2005年12月18日:迫りくる恐怖


 数年前にどこで読んだのか忘れたが、唐沢俊一が、ついに自分にも「あれあれ症候群」が..と嘆いていた。

 「あれあれ症候群」というのは、まぁ大体30台になれば誰もが思い当たる症状で、「ほら、アレだよアレ! なんつったかなー..アレ。わかるでしょ、アレ!」、という、付き合わされる人間にとっては迷惑なことこの上ない(滑稽感を伴う)症状なのであるが [;^J^]、まっこと、本人にとっては笑い事ではないのである。そして唐沢俊一も、歳のせいか、ついに俺も..と嘆いていたというわけである。

 ちなみに私は唐沢俊一と同い年であり [;^J^]、もちろん、この「あれあれ症候群」の自覚症状はある。まぁ、固有名詞が出てこなくなるとか、昨夜の食事の献立が思い出せなくなるとかは、これはもう加齢に伴う自然現象なんだから、悪あがきしても仕方がないよなぁ..と、半ばヤケクソ気味に達観?していたのだが..

 このたび、唐沢俊一の実弟の唐沢なをきが、まことに戦慄すべき漫画を描いた。ビッグコミックオリジナル増刊に連載中の「けんこう仮面」である。これはいわゆるレポート漫画で、自他共に認める不健康極まりない作者自身が、さまざまな健康法を試してはその効果を漫画にする、という趣向である。

 1月増刊号に掲載された第21回「空洞化!!」が、この「あれあれ症候群」を取りあげているのであるが..その描写というか、繰り出される「実例」が鮮烈なのである。

 「自宅の電話番号がでてこないの! 郵便番号を忘れちゃうの!」「人と会話中に突然ボコッと穴があいたようにでてこない。人名、地名、形容詞、副詞そのたモロモロ」「春はあけぼのだけど、夏はなんだっけ?」「あの、人種差別っぽい政策なんだっけ、南アフリカだかどこだかの! カタカナで!! なんとかいうの!(南アフリカだからカタカナだよ、そりゃ)」「「ブレードランナー」の原作書いた人誰だっけ?」「カナダの首都の名前なんだっけ?」「あの、たくさんある物事のなかでもとりわけっていう意味で使う言い回し、あれなんて言ったっけ!?(フクロウじゃなくてみみずくじゃなくて)」などなどなどなど..

 粟だつ恐怖とはこのことだ。上記は一部の引例であるが、私の場合とりわけシンクロ率が高いのが、「人と会話中に突然ボコッと穴があいたようにでてこない。人名、地名、形容詞、副詞そのたモロモロ」である。固有名詞なら諦めもつくが、普通の形容詞や副詞が出てこない日には、日本人(日本語ネイティブ)としてのアイデンティティの崩壊寸前にまで追い詰められてしまうのだ、いやホント。上記の「..(フクロウじゃなくてみみずくじゃなくて)」の正解は「なかんずく」だと思うが、これが出てこない場合、手元に電子辞書があっても検索のしようが無いのである。

 今年の2月頃の日記にも、「ミネラル・ウォーター」「リーダーシップ」「正念場」などの単語が咄嗟に出てこないことがあったと、激白したが..つい先日の日記の例で言えば、「今日来たスパムは色合いが違う」と書いてから、どうも釈然とせず..「“色合い”ではないだろう」、と、散々考えたのだが、より適合する単語を思い出せず、電子辞書に収められている広辞苑で「あい」を逆引きして総当たりしたのだがどれもマッチせず、やむを得ずそのままアップしたのであるが..2時間ほど経ってから、「毛色」という単語をようやく思いだし、こそこそと書き替えたという始末であった。(「あい」ではなく「いろ」で引くべきだったのだ。)

 「けんこう仮面」に話を戻すと、唐沢なをきは脳に異常がないかどうかMRI検査を(いやいや)受診した結果、もちろん異常無し。物忘れの酷さは「気のせいです」、と、医者に片付けられてしまい..私は今日もどんどんどんどん忘れ続けている、というオチなのであるが..

 恐怖である。明日はあなたもこうなるのだ。(みんなで地獄に落ちようよ..)

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*解説


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Dec 22 2005
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