横溝正史「獄門島」


 16年前の読書記録では、「動機が弱い(殺す必要があるとは思えない)のが、致命的欠陥である」としているが、ちと狭量に過ぎる様だ。確かに説得力は弱いし、トリックらしいトリックも無いのだが(強いて言えば、3人娘を殺した下手人が、別々に3人いたこと位か)、舞台の見事さと、登場人物たちの取り合わせの妙は、高く買える。ほとんど必然性の感じられない「見立て」殺人の趣向など、人工美の極地である。

*角川文庫


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jul 15 1995 
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