島田一男「古墳殺人事件」


 こういう、大仕掛けの物理トリックには、好感を持てない。本書のケースでは、被害者の位置を正確に固定することは出来ないので、命中する確率が非常に低い..という訳で、これだけの作品ならば、評価出来なかったのだが、実は、被害者は自殺(殺意を持ってこの仕掛けを用意していた人物に罪を被せるために、殺されたと擬装)していたので、事情は異なってくる。それにしても、正確な位置を測定出来たのだろうか? また、いまひとつ自殺する必然性に乏しい。結局、古代エジプト文化の蘊蓄と、古代エジプト詩に擬装した暗号の解読の面白さでもっている作品である。

*徳間文庫


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jul 15 1995 
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