C・ロースン「首のない女」


 舞台の雰囲気は(特に前半が)良い。が、(急速に)移動しつつあるサーカス(従って、犯罪の舞台も現場も、時々刻々、分解/再構築される)という、ミステリの前提条件を崩すが如き設定は、十分には生かされていないと思う。ミスディレクションが次から次へと繰り出されるが、正直、トリックもストーリーも、さほど記憶には残りそうもない。それは、マーリニ&ロスの主役コンビが余りにも魅力的だからでもある。彼らの脱獄シーンは、まことに痛快である。

*創元社


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jul 15 1995 
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