A・ブラックウッド「ウェンディゴ」


 惜しい。舞台装置もテーマも万全なのだが、足を焼かれた犠牲者が「宙を飛ぶ」というイメージが釈然としないのである。いずれ足は、山羊の足にでもなったのであろうが、何故宙を飛ぶのか? それのどこが怖いのか? 文化背景の違いによって、理解困難になっているのだろう。(同様に「宙を飛ぶ」魔女を想起させるのだろうか?) − というのが、94年3月の初読時の感想である。そう、「ウェンディゴ」がカナダの森林地帯を飛び回る鳥の魔物であるということを、知らなかったのである。[;^J^] この知識を前提として読みなおすと、これは凄い。人間が“魔物化”する恐怖が、迫真の筆力で描き出されている。

*『ブラックウッド傑作選』創元推理文庫


MASK 倉田わたるのミクロコスモスへの扉
Last Updated: Jan 7 1996 
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